株式会社Punks Farmer|地域企業業務効率化サポート補助金事例紹介#3
デジタル技術で実現する農業効率化と品質向上事業
「震災前までここは田んぼでした。津波で土地も設備も壊滅的な被害を受けて、それきりの状態がしばらく続いていました」真冬でも春のように暖かいイチゴハウスでそう語るのは株式会社Punks Farmer会長の早坂洋平さん。「そんな中、その後の自分たちの生き方を変えることになるミガキイチゴという高品質なブランドイチゴの存在を知りました。そして、それを栽培する山元町の農業生産法人GRAが就農を支援していることを知り、2020年7月に妻がGRAの2年間の新規就農プログラム『ミガキイチゴアカデミー』に参加しました。その修了のタイミングで私が会社を辞めて、イチゴ農場を本格的に始動したのです」
同社代表である奥様と共にイチゴ農家を始めて約4年。この事業を始めるそもそもの動機の背景には、自身の生き方に対する問い直しがあったと早坂さんは語ります。「GRAのイチゴ農場を見学させてもらったときに、ハウスの中に入ったらとても気持ちが良かった。こんな毎日を仕事にできたら最高だなと思いました。もともと私には農業への憧れがあったのですが、それを断念して会社員になって、気づいたらもう17年が経っていました。たぶん多くの人がそうであるように、私も自分の仕事にどこか疑問を感じていて、本当にいいものを作って、売りたい、そんな想いを日々抱えていました。想いが具体的な仕事と結びつかないのは、出会いとマッチングの問題なのかもしれません。私の場合は、イチゴと出会った。だから、あとはいいイチゴを作るだけだったのです」
Punks Farmerが掲げるテーマは、誰もがココロ躍るコトを仕事にできる社会の実現。「勇気をもって踏み出せばなんとかなる……というのを見せたい」と語る早坂さんにとって、ご夫婦で挑戦するイチゴ作りには、そんなメッセージの発信も込められているようです。
01 今回の補助金活用の背景にあった課題は?
イチゴのハウス栽培は、気温から湿度、CO2濃度まで、ハウス内の環境を適切に保ってあげることがとても重要です。昨今は異常気象の影響でこれらをさらに緻密にコントロールしなければならないので、とにかく人手が掛かります。なかでも、カルシウム、鉄といった栄養剤の葉面散布の作業負担が特に大きかったですね。現在の作付面積は2000平方メートルで、その作業のたびに45分から1時間程度の時間が掛かっていました。栄養剤自体は人体にそれほど影響はないものの、毎日のことなので安全面を考慮し、どんなに暑くてもカッパとゴーグル、さらにマスクをして散布していましたから、かなりきつい作業でした。あと、水滴状になった栄養剤が白イチゴの実に付着すると表面に黄色いシミができてしまうので、そこに神経を使いながら散布する必要があり、作業効率の面でも課題を感じていました。
現在、パンクスベリーの商品名で出荷しているのは、とちおとめ、さちのか、やよいひめ、黒いイチゴと呼ばれる真紅の美鈴、そして白イチゴのパールホワイトとゆきぼたんの6品種で、赤・黒・白の3色のイチゴの詰め合わせパックがとても人気です。見た目の華やかさに加えて、味わいが明らかに違う高品質なイチゴを手軽に楽しめるところが好評なのですが、シミができたものは出荷できませんから、すると白イチゴの収量が減って、人気の詰め合わせパックの出荷量も減ってしまいます。取引先のなかには商品の安定供給を重視するところもあるので、白イチゴのシミは作業効率と収量の問題だけでなく、ビジネス上の信頼関係に影響する問題でもあったのです。


02 補助金をどう活用し、どのような成果が得られましたか?
栄養剤の葉面散布と昇温抑制、加湿を自動で行う機器「Cool Pescon」を導入しました。全国的に実績のあるシステムで、ずっと注目していたんです。ただ、高額なため、補助金の活用を前提に導入を検討していたのですが、当農場が補助対象としてマッチするものがどこにもなくて途方に暮れていました。そんなとき、ネットを検索したら、仙台市産業振興事業団が実施するこの補助金とたまたま出会うことができたんです。補助金申請に必須な事前相談の締切直前だったのですが、作業負担を軽減したい、白イチゴのシミもなんとかしたい……と、藁にもすがる思いで滑り込みました。結果、申請手続きも間にあって無事採択され、念願のCool Pesconを導入できました。
導入後の成果として、それまで人が行っていた葉面散布作業をほぼすべて自動化できたことで、月63時間掛かっていた作業時間を削減できました。重いタンクを背負ってハウスの中を何往復もする連日のきつい作業から解放されて、本当に楽になりました。効率化によって生まれた時間は、他の作業、例えば葉っぱの整理などに割いています。これはとても大事な作業で、不要な葉っぱを除去することでイチゴの成長の展開が早くなって、次の花が早く咲きます。つまり収量がアップするんです。もちろんイチゴの状態もいい。今回の業務効率化にはさまざまな相乗効果が見られますが、いいイチゴができるのは農家として純粋に嬉しいですね。
あと、白イチゴのシミ問題については、栄養剤の霧状散布によってシミの発生を大きく抑制することができました。加えて、霧状の栄養剤が太陽光を適度に遮ってくれるおかげで、強い日差しとそれによる過度な温度上昇も抑制できています。


03 大変だったことを教えてください。
窓の開閉による温度上昇抑制、暖房による気温・地中温度の調整、そしてCO2濃度の調整と、複数の条件を監視・自動制御しているところへ本システム「Cool Pescon」を組み入れたのですが、当初はこれらの最適な設定値を見つけるのに苦労しました。例えば、最近は太陽光の質が変わってきているのか、日差しが強すぎてイチゴの花が焼けてしまう事象が見られたのですが、こうした変化に対して、霧状の栄養剤が太陽光を遮ってくれることを加味しながら、その噴霧の間隔や、窓を開閉させる温度の「最適」を見つけなければなりません。もちろん、現在の設定が必ずしも最適というわけではないでしょうから、今後もさまざまな変化を見守っていく必要があります。
機器の設置に関していうと、栄養剤散布のための配管(1本50メートル)を栽培棚の上に5本敷設しなければならず、DIYが苦手な私にはやや重荷だったのですが、幸い妻が得意だったので、水道配管設置を外部委託したくらいで、あとは自分たちで出来ました。


04 今後の業務効率化のビジョンは?
効果を見ながら次の効率化のビジョンを練っていくことになると思います。品種によって成長の波が異なりますし、微生物や月の満ち欠けといった自然の力も取り入れているので、これまでと同様に試行錯誤を繰り返していくなかできっと新たな作業が加わって、その効率化が次なるテーマになっていくでしょう。それでも、いちごが持っている本来のポテンシャルをどれだけ引き出せるかが最大のテーマであることに変わりはありません。当ハウスでは、先ほど紹介した6品種のスタメンの他にあと13品種のイチゴを栽培しているのですが、もしかしたらこの中から来年の新たなスタメンが誕生するかもしれません。

イチゴづくりの仕事はまさに「ココロ躍るコト」なのでしょう。
05 最後に、今回の補助事業の感想をお聞かせください。
事業計画書を見てくださった事業団の専門家の方は本当にすごい方だと思いました。ここをこう変えれば読みやすくなるよとか、ここをこうすれば採択可能性が高くなるよとか、的確なアドバイスをいただけましたから。私は文章を書くのが決して苦手ではないのですが、第三者に伝わりやすい整然とした表現という点でとても参考になりました。
支援担当者からコメント
本事業は、厳しい気象条件や季節ごとの過酷な作業負荷という「現場のリアルな課題」に対し、デジタル技術をひたむきに組み合わせて解決を図る、とても志の高い取り組みだと感じました。
支援にあたっては、早坂会長が描く「9か月で5648時間の労働削減」という大きな可能性を大切にしながら、それが単なる計算上の数字で終わらないよう、まずは「導入から1か月で、土台がしっかり整った状態」であることを冷静に確認し合いました。その上で、「これから収穫サイクルを一周する中で、一つずつ実証していこう」という中長期的な視点を共有し、 納得感のある事業計画へと深めることができました。
早坂会長の情熱とデジタル技術が融合したこのプロジェクトが、復興エリアの希望あるモデルケースとして、地域全体に笑顔を広げていくことを心から期待しております。
企業概要
仙台市地域企業業務効率化サポート補助金活用事例
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