東北環境整備株式会社|地域企業業務効率化サポート補助金事例紹介#1
・見積作成時における積算ソフトを活用した業務効率化
・ノズルカメラによる下水道管渠のスクリーニング調査効率化事業
埼玉県八潮市の道路陥没事故は、下水道の老朽化が深刻な社会的問題であることをあらためて浮き彫りにしました。「下水道の耐用年数は50年と言われています。管渠(かんきょ)内で発生する硫化水素がコンクリートの劣化を促進させるんです」そう語るのは、下水道の維持管理に欠かせない管渠内調査・清掃を行う東北環境整備株式会社 代表取締役の八島和幸さん。同社は他にも、浄化槽の清掃・点検やし尿汲み取り、貯水槽・排水管の清掃、汚泥・廃油等の産業廃棄物の収集運搬など、私たちの衛生的な暮らしを昭和47(1972)年の創業当初からずっと支えてきました。
仙台市の下水道の総延長は2024年時点で5,023キロメートル。人口普及率は99.8パーセントと全国でも指折りの高さで、市の隅々まで下水道網が行き渡っていることがわかります。「仙台市が下水道整備を開始したのは明治32(1899)年で、東京、大阪に次いで3番目に古い歴史を持ちます。一方、その老朽化に関していうと、全国の下水道の約7パーセントが標準的耐用年数を過ぎていると言われていますから、下水道管理では先駆的なこの仙台市も例外ではないとみるべきでしょう」
私たちは普段、足元を流れる下水道を意識することなく暮らしています。見えない場所にあるからです。だからこそ、その劣化も気づかないところで静かに進んでいます。破損や詰まりが起これば、道路陥没など都市生活に大きな影響を及ぼしかねません。事故は起きてからでは遅く、未然に防ぐことが何より重要です。下水道管渠の調査・清掃は、目立つ仕事ではありませんが、市民生活の安心と都市機能を将来にわたって支える重要な役割を果たしています。

01 今回の補助金活用の背景にあった課題は?
当社では、市町村から下水道の詳細調査業務とスクリーニング調査業務を請け負っています。なかでも、管渠の劣化や変状を早期に発見するうえで、広大な下水道網を「面的」に調べるスクリーニング調査は特に有効です。しかし、長大な下水道に対して一度に調査できる距離が限られているため、調査機材(TVカメラ車、高圧洗浄車、吸引車)の設置と撤収、移動を繰り返さなければならず、作業負担の大きさが課題となっていました。具体的には、まず高圧洗浄車で管渠内の汚泥や土砂をマンホールへ集めます。次に吸引車でこれを除去し、最後にロボットカメラを走らせて内部の状況を調べます。1回の調査で進める距離はおよそ50メートル。作業時間は約30分で、次の作業現場までの移動時間が5分から10分です。
加えて、現在使用しているロボットカメラはメーカーサポートが終了しているため、もし故障すると下水道管渠の調査ができなくなってしまうリスクを常に抱えていました。
一方、バックオフィス業務では、少人数体制のため見積作成への対応が遅れがちな状況がありました。手作業による計算のためミスが起こりやすく、チェック体制も十分とはいえませんでした。本社と他の営業拠点で作成した見積もりにずれが生じることもあり、特定の担当者のスキルに依存する業務体制からの脱却が課題となっていました。
このように、現場では作業負担の大きさが、バックオフィスでは見積業務の属人化と精度確保が課題となっており、現場と管理の両面で業務効率化と体制整備が求められていました。


02 補助金をどう活用し、どのような成果が得られましたか?
調査業務の作業負荷に関しては、高圧洗浄ノズルとロボットカメラが一体になったノズルカメラを導入しました。前部にカメラ、後部にジェットノズルを備えており、ノズルからのウォータージェットで前進します。引き戻す際に管渠内を清掃しながら汚泥や土砂をマンホールに集めるところはこれまでの作業と同じですが、カメラで管渠内の状態を確認しながらこの作業ができるので能率が一気に向上しました。
具体的には、1スパン(50メートル)の調査・清掃に30分掛かっていたのが10分まで短縮でき、さらに機材車が3台体制から2台体制になったことで設置と撤収、移動も楽になりました。また、マンホールが道路上にある場合は作業に通行規制が伴うのですが、その規制時間が短くなったことで周辺住民の皆さんにお掛けしていたご不便も軽減されたと思います。
見積作成については、積算ソフト「Gaia Cloud」を導入しました。これは土木工事に特化した公共工事積算ソフトで、下水道の維持管理業務にも対応した最新の積算要領を反映していること、さらにクラウド型のため拠点間で共用できることが選定の大きな理由でした。
導入後は積算作業の効率が向上し、1時間かかっていた積算時間は45分に短縮。月あたり約4時間の作業時間削減につながりました。その結果、当初は月10件の積算業務対応を目標としていましたが、現在では月13件の積算業務に対応できています。さらに、業務が集中する時期に発生していた時間外勤務も、月20時間削減することができました。加えて、拠点間で同じ環境を共有できるようになったことで、見積作成業務の属人化の解消にもつながっています。


03 大変だったことを教えてください。
海外のメーカーからノズルカメラがなかなか出荷されず、8月に予定していた納品が12月までずれ込んでしまいました。そのため、予定していたスケジュールが大幅に遅れ、一時は期間内に補助事業が完了するだろうかと心配しましたが、その間、新しい機材の使い方について社内で事前に研修を行うなど、納品後すぐに運用できる体制を整えることに切り替えました。結果、補助事業の実施期限に間に合って本当に良かったと思います。
運用開始から2カ月が経ち、現場では最適な運用方法を見つけるために試行を重ねている段階ですが、それでも清掃と調査を一度の作業で行える効果は大きく、今後の現場運用に大きな可能性を感じています。
積算ソフトに関しては、導入当初は社員みな恐る恐る慎重に見積書を作成している様子でしたが、ソフトの扱いに慣れてからはだいぶスムーズに作成できるようになりました。共通の積算環境が整ったことで、見積業務の属人化や拠点間で生じていた見積内容のずれについても、解消に向けた動きが始まっています。今後は、この環境を活用しながら、見積業務のさらなる効率化と精度向上を図っていきたいと考えています。


04 今後の業務効率化のビジョンは?
先日、国際ロボット展を見てきましたが、私たちの仕事でもロボットによる自動化が可能だと強く感じました。管渠の寸法と距離を入力すると、ロボットがジェットノズルを自動で送り込み、清掃しながら引き戻す。そうした仕組みを実現できれば、人間がマンホールに降りる必要もなくなります。マンホール内には有毒ガスや酸欠の危険がありますし、ホースの巻き込み事故もいまだに後を絶たないのが現状ですから。
それから、今回導入した機材は、実はとても多機能で、作業時の位置情報をデータとして取り出すことができます。このデータを結合すれば、地域の下水道のデジタルマップ化も不可能ではありません。いまのところ本機材を運用しているのは東北で当社だけですが、事業者の協同組合としてそうした未来型の維持管理に取り組む先行事例もあります。
そんな将来像を思い描くとき、ふとこの仕事の原点に思いを巡らせることがあります。当社の創業者である私の祖父は、肩に天秤棒のタコが出来ていたそうです。し尿の回収にバキューム車が用いられる前は人が担いで運んでいたんです。それから半世紀が経って、ここまで変わりました。今後も、地域の公衆衛生を支える事業者として、下水道維持管理のあり方を広い視点で考え続けていきたいと思っています。

05 最後に、今回の補助事業の感想をお聞かせください。
事業計画書を作成する際、事業団の専門家の方にサポートしていただいたことで、自分たちの強みと弱みをあらためて見つめ直すことができました。それまでは気持ちばかりが先行し、専門用語も多く、どうしても一方通行の表現になりがちな事業計画でしたが、第三者の視点から助言をいただくことで自分たちの事業を俯瞰して捉えられるようになりました。その過程では新しい発見も多く、発想の幅も広がったと感じています。
支援担当者からコメント
本事業は、下水道の陷没事故を防ぐための調査効率化と、積算業務のデジタル化を進める、地域インフラを守るための重要な取り組みでした。
支援においては、これら「現場」と「事務」双方の改善効果がより鮮明に伝わるよう、具体的な時間短縮の可視化をサポートしました。
特に、機材納入が遅れるという不測の事態に直面しましたので、前倒しのスケジュールとして、マニュアル整備や社内研修、さらに最終成果を図る「現場の使い勝手」をアンケート準備など、本格稼働への土台作りをアドバイスしました。
予期せぬつまづきにも真摯に向き合い、リカバリー対応できたことが本事業をより強固なものにできたと感じています。
この新たなチャレンジが、地域の安全と働く皆様のやりがいにつながることを心から期待しております。
企業概要
東北環境整備株式会社
事業内容:清掃業(浄化槽維持管理、ビルメンテナンス、下水道維持管理、産業廃棄物収集運搬)
東北環境整備株式会社 HP
〒981-0962
宮城県仙台市青葉区水の森三丁目41番地6号
TEL022-278-1684
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