有限会社大島屋
「白河蒟蒻/板」

有限会社大島屋は、仙台市産業振興事業団が主催する新東北みやげコンテストの受賞企業です。

第5回「白河蒟蒻/板」特別賞受賞

大島屋様①

 福島県白河市。ここに、約200年の歴史を持つ老舗蒟蒻店があります。それが、「大島屋蒟蒻店」。この大島屋蒟蒻店で、2016年から取り組んでいるのが、在来蒟蒻芋を使った蒟蒻づくりです。この蒟蒻芋をつくっているのは、かつて日本一の生産量を誇った矢祭町。茨城県との県境に近い矢祭町とのご縁を得たのは、ある日、大島屋蒟蒻店8代目の吉島祐輔さんが目にした記事がきっかけでした。

大島屋様②
写真:白河市の「大島屋蒟蒻店」でインタビューに答えてくれた吉島さん。帽子とメガネがトレードマークです

 「幻のコンニャク再び」というその記事には、在来種の品質の高さや歴史が記されていて、そこにとてつもない魅力を感じたという吉島さん。早速、矢祭町役場に連絡を入れ、生産者を紹介してもらったそうです。外から来た吉島さんを最初こそ訝った農家さんたちですが、大島屋の初代が蒟蒻芋を乾燥させて粉にし、全国的に広めた“蒟蒻の神様”ともいわれる中島藤衛門と同じ名前の「藤衛門」であったこと、吉島さんが芋の植え付けから収穫までともに汗を流したことで信頼を置いてくれるようになったそうです。

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写真:矢祭町の在来蒟蒻芋畑にて

 在来の蒟蒻芋は、蒟蒻をつくれる大きさになるまで3~4年を要します。さらに、冬場は芋を掘り起こして越冬させるなど、実に手間がかかります。吉島さんは「今の蒟蒻の95%くらいは、品種改良され病気にも強い赤城大玉を使用しています。僕たちは、この在来種の生産が続いていくことと、この文化を守っていきたい。だから、農家さんから適正価格でお芋を買い取らせていただいて、丁寧に蒟蒻をつくる。それが売れれば、在来種の蒟蒻芋の生産も増えるし、『やってみたい』っていう若い人が出てくるかもしれないじゃないですか」と話します。

大島屋様④
写真:在来蒟蒻芋はこの大きさになるまでに3~4年。育てるのにも手のかかる品種なのです

 食物繊維のほか、セラミドという美肌成分も豊富な蒟蒻は、日本では安土桃山時代の医学書に薬として記録されているほどの古くからの食材。最近では、「スーパーフード」として海外での人気も高まりつつあります。
 私たちの生活にあまりに馴染み深い蒟蒻。スーパーマーケットで年中買えるため、「旬」があることを知る人は多くないかもしれません。実は、蒟蒻芋の収穫は、晩秋~冬。生芋は足が早いため、収穫後すぐに蒟蒻に加工しなくてはなりません。だから、この大島屋蒟蒻店の「白河蒟蒻」も、製造販売の時期が限られたまさに「冬の味覚」なのです。

大島屋様⑤

写真:西郷村の大島屋蒟蒻店工場入り口。蒟蒻芋の形をしたロゴがかわいらしい

 白河市のお隣・西郷村に平成4年に移転したという工場を訪ねました。80年代の歌謡曲が流れる工場では、吉島さんと奥様の佳津恵さん、そして佳津恵さんのお父さまの3人が忙しく蒟蒻づくりに追われています。大阪出身で、東京で舞台俳優をしていた吉島さんが大島屋蒟蒻店を継いだのは、今から13年前。佳津恵さんとの結婚がきっかけでした。「200年も続いているのにやめちゃうのはもったいないよね、って。なんか、蒟蒻っておいしいし、かっこいいなと思って」。

大島屋様⑥

写真:分厚く皮をむいて、本当においしい部分だけを蒟蒻にします

 収穫したばかりの蒟蒻芋は、きれいに洗って分厚く皮をむいていきます。「例えるなら、お酒の大吟醸をつくる感じ。素材を極限まで“磨く”といった感じですね」と、吉島さん。

大島屋様⑦

写真:工場内に流れる歌謡曲に合わせ、鼻歌を歌いながら蒟蒻芋をすりおろしていく吉島さん。とはいえ、「腱鞘炎になりかけてるんですよね(笑)」と、なかなかの重労働ぶりを伺わせます

 皮をむいた蒟蒻芋は、3人の手ですりおろされます。「機械でこの作業ができればいいんでしょうけれど、できないんですよね」と苦笑しながら、水を張った容器におろし金で丁寧にすりおろしていきます。

大島屋様⑧

写真:すりおろして水分を含ませ、適度な固さになった蒟蒻芋。まだまだ食べられる状態ではありません

 しばらく待つと、すりおろした蒟蒻芋が水を吸うので、棒を使って感触を確認。ちょうどよい固さになったら、大きなボウルに移して火にかけ、焦がさないようにへらでかき回すのです。「“目が開く”というプツプツと穴が開いた状態にするんです。そうすると、石灰水と混ざりやすいんですよ」。

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写真:ボウルに入れて火にかけ、“目を開けさせる”作業も手作業です

 蒟蒻芋にはシュウ酸が含まれており、すりおろしたり、加熱したとしても食べることができません。石灰水と合わせた後に茹でることで中和され、おいしい食材になるのです。“目を開けた”すりおろしの蒟蒻芋は、「バタ練機」と呼ばれる機械に入れ、さらによく混ぜ合わされます。こうすることで気泡を多く含むようになり、アクも抜けやすく、料理をした際には味が浸みやすくなるのです。

大島屋様⑩

写真:バタ練機でよーく練ります

 この日は、玉蒟蒻をつくる日。グツグツと煮えたお湯の中に、機械の中でアク入れされた玉蒟蒻が、ポコポコと送り出されます。

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写真:グツグツ煮立ったお湯の中で「アク抜き」をします。均一な色になるまでよく混ぜてあげるのがポイント

 しばらくかき混ぜると「出来立て、食べてみてください」と、吉島さん。煮あげた玉蒟蒻に歯を当てると、サクッとした食感の後で、ふわっと芋の香りが口に広がります。「蒟蒻って芋からできてるんだなぁって、これを初めて食べたときに感動したんですよね」と吉島さんが言うように、この食感と味は感動モノ。それに、これまでの重労働で蒟蒻ができあがっていることに、感謝の思いが沸き上がります。

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写真:出来上がったばかりの生芋蒟蒻は、黄色いのが特徴。時間を置くともう少し色が抜けて白っぽくなります

 在来蒟蒻芋を使用した「白河蒟蒻」シリーズは、「板」「玉」「糸」の3種をラインナップ。どれもサクッとした食感と芋の味が楽しめます。

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写真:白河蒟蒻の板と玉蒟蒻。どちらも540円(税込み、2019年12月23日現在)

 蒟蒻芋の味そのものを味わうなら「刺身」でどうぞ。
 薄切りにして、塩をつけて食べたり、オリーブオイルをかけても美味!

大島屋様⑭

大島屋様⑮

写真:ワインやお酒とも相性の良い蒟蒻のお刺身。年末年始のパーティーシーズンにも重宝するかも?

 ボリュームメニューなら、ステーキがおすすめ。切り目を入れて、オリーブオイルでじっくり焼き上げたら、ステーキソースをジュワっと回し入れます。せっかく丁寧に手づくりされた蒟蒻をいただくのですから、ステーキソースも手づくりで。すりおろした玉ねぎとにんにく、リンゴに、酒、しょうゆ、砂糖を入れて鍋でひと煮立ちさせれば簡単に出来上がります。アツアツを召し上がれ。

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写真:表面をカリッと焼き上げた蒟蒻ステーキ。がっつり食べても低カロリー&ヘルシー!

 特に女性におすすめなのが、忙しい朝でも簡単にできる“蒟活”。玉蒟蒻5粒に豆乳100cc、はちみつを入れて「蒟蒻スムージー」に。小松菜やリンゴなどを加えてグリーンスムージーにするのもおいしいですよ。蒟蒻のプチプチっとした食感も楽しめる、美肌効果&整腸効果抜群のヘルシードリンクで1日の元気をチャージしましょう。

大島屋様⑰

写真:蒟蒻のプチプチした食感も楽しめるスムージー。さまざまな果物などと合わせて、自分のお気に入りレシピを探してみては?

 ここで紹介した「白河蒟蒻」は、白河市内の「大島屋蒟蒻店」のショップやオンラインストアで販売中ですので、ぜひ一度試してみてください。
 その驚きのおいしさに蒟蒻の概念が覆されること、間違いなしですよ。

大島屋様⑱

写真:「大島屋蒟蒻店」ショップ。「今後はお店で『玉こん』などのメニューを提供して、人が集まれる場所にしたいですね」と、吉島さん

商品の詳細はコチラ

取材/2019年12月

有限会社大島屋(大島屋蒟蒻店)

[SHOP]
〒961-0954 福島県白河市天神町6番地
TEL 0248-23-2704
*金曜日~日曜日 11:00-20:00のみOPEN
(第二・第四・日曜日定休)

[工場]
〒961-8091 福島県西白河郡西郷村熊倉字折口原454-3
TEL 0248-25-1987 FAX 0248-25-4876

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撮影/堀田 祐介

東北大学法学部卒業後、仙台市内の商業写真撮影会社に就職。写真の道に進む。アシスタントを経てカメラマンとなり、物撮、人物撮影など、写真全般にわたり様々な仕事をこなしながら10年勤務。その後準備期間を経て独立、現在はフリーランスとして、プロバスケットボール・仙台89ERSオフィシャル(初年度から現在まで。来季で15季目)のほか、雑誌媒体の取材(街ナビプレス・仙臺いろはマガジン・ウォーカー・るるぶ)、商業写真撮影、番組用写真撮影と各方面で活躍。

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新東北みやげフェア開催!【終了しました】

Made in TOHOKU みやげのトレンドはここから

「第6回 新 東北みやげコンテスト」受賞商品の販売会が開催されます!

東北スタンダードマーケット画像

│日程│
2019年12月26日(木)~2020年1月13日(月・祝)

│会場・運営│
東北スタンダードマーケット(運営:株式会社金入)
宮城県仙台市青葉区中央3-7-5 仙台パルコ2/5F
TEL 022-797-8852(10:00-21:00)

│年末年始営業時間│
12月31日 10:00~18:00
1月 1日 休館
1月 2日 7:30~20:00
1月 3日 9:00~21:00

新東北みやげ_商品

*「kitaha-纏-」については、人気商品のため品薄となっております。
 12/28(土)以降に入荷予定です。
 詳細については店舗(022-797-8852)までお問合せください。

新 東北みやげコンテストで受賞した素晴らしい商品が勢ぞろい!
東北の新しいおみやげを探してみませんか?
会場でお待ちしております。

新 東北みやげコンテストとは

新東北みやげフェアの詳細はコチラ

│お問合せ│

新 東北みやげコンテストについて

公益財団法人仙台市産業振興事業団
経営支援部 経営支援課 担当:玉置・鈴木
TEL 022-724-1122 FAX 022-715-8205
E-mail keieishien@siip.city.sendai.jp
URL https://www.siip.city.sendai.jp/miyage2019/

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新東北みやげフェアについて

東北スタンダードマーケット(運営:株式会社金入)
店長:伊藤
TEL 022-797-8852 FAX 022-797-8857
URL https://tohoku.theshop.jp/blog/2019/12/18/150503

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コラボロゴ

新東北みやげコンテスト
当日リポート

最優秀賞はあの商品!!!

 11月21日(木)、仙台市産業振興事業団が主催する「新 東北みやげコンテスト」が開催されました。このコンテストは、東北の企業が開発した新しいおみやげ品を発掘して紹介することで販路拡大を目指すもの。毎年恒例の行事となっており、今回で6回目を数えます。

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写真:数多くの出品がある中、受賞を果たした皆さん

 食品や飲料、雑貨などさまざまなジャンルの「おみやげ」の応募総数は199品。そのうち、54社56商品が入賞を果たし、コンテストに駒を進めました。コンテストでは、日本全国から集まった11人の審査員がブースをひとつずつ回り、採点を行いました。

みやげコンテスト②

 アイデアやデザイン性、味にこだわったおみやげ品がずらりと並ぶ中、最優秀賞に選ばれたのは、有限会社ファーム・ソレイユ東北の「kitaha-纏-(まとい)」。北限の紅茶である「kitaha」に蔵王町「ざおうハーブ」のハーブをブレンド(kitaha についての詳細は、こちらをご覧ください)。和紅茶とハーブという組み合わせの妙、そして可愛らしいパッケージデザインが評価されての受賞となりました。
 フレーバーは、カモミールとレモンバーベナの2種類をラインナップしています。

みやげコンテスト③

商品写真撮影:渡邉 樹恵子

 抗酸化作用、消炎症効果があり、美肌効果や風邪予防に効果があるといわれるカモミール。「kitaha-纏-」のカモミールは、いわゆる普通のカモミールティーとは一線を画す味わいで、和紅茶のふわりとした甘みが口の中で広がったのちにカモミールが優しく香ります。ハーブの独特な味が苦手という方も、これならおいしくいただけそうです。
 レモンバーベナは鎮静効果、抗炎症効果があり、神経の緊張や不安を解消したり、ストレスからくる頭痛や腹痛などを和らげる効果があるとされるハーブ。「kitaha-纏-」のレモンバーベナは、すっきりした味わいでホットはもちろん、夏場にはアイスティーでもおいしくいただけそうです。

みやげコンテスト④

写真:壇上で感極まって涙ぐむ朱夏さん

 最優秀賞受賞のアナウンスを受け、壇上に上がった日野朱夏さん。郡和子仙台市長からトロフィーを授与され、「東日本大震災以降、石巻のもので東北を元気にしたいという一心で家族一丸となってがんばってきました」と涙ながらに語ると、会場からは拍手が…。「私は小さいころから、お父さん、お母さんのがんばりを見ていて、いつか報われてほしいと思って生きてきました。私たちだけでこの商品を生み出せたと思っていません。地域の皆さん、kitahaチームの皆さん、事業団の皆さんのおかげで生み出せたと思います。ありがとうございました」と話しました。

みやげコンテスト⑤
写真:壇上に上がったお父さんの雅晴さんと抱き合って喜びを分かち合いました

 朱夏さんの涙ながらのスピーチに、会場ではもらい泣きする人も…。最後は、朱夏さんのお父さんでkitahaの生みの親である雅晴さんも壇上に上がり、会場のすべての人たちから温かな拍手が送られました。

みやげコンテスト⑥

写真:優秀賞を受賞した品々

 そのほか、優秀賞には「弥治郎こけしのマスキングテープフォルダー」(株式会社不忘印刷所・宮城県白石市)、「八戸いちご煮の炊き込みご飯(そっこ→ご褒美シリーズ)」(株式会社 味の海翁堂・青森県八戸市)、「椿茶ミニパック」(株式会社バンザイ・ファクトリー・岩手県大船渡市)が選ばれました。
 そして、特別賞インバウンド部門には「サムライアロハ」(株式会社サムライアロハ・宮城県仙台市)、デザイン部門に「庄内町のほしがきさん」(庄内町新産業創造協議会・山形県東田川郡八峰町)、地域性部門に「ハタハタオイル漬けプレミアム」(株式会社鈴木水産・秋田県)、アイデア部門に「夢☆宇宙米おにぎり」(夢☆宇宙米プロジェクト・宮城県角田市)が選ばれました。

 今回の最優秀賞、優秀賞、特別賞を受賞した商品については、この「暮らす仙台」の「銘品ものがたり」で後日取材し、開発秘話などをたっぷりご紹介します。また、入賞商品についても「よいもの」ページで順次ご紹介していきますので、お楽しみに!

「新 東北みやげコンテスト」についての詳細はこちら

石巻うまいもの株式会社
「石巻金華茶漬けシリーズ」

石巻うまいもの株式会社は、仙台市産業振興事業団が主催する、新東北みやげコンテストの受賞企業です。

第5回「石巻金華茶漬けシリーズ」特別賞受賞

 日本有数の水揚げ高を誇る石巻漁港を有し、“魚の町”として知られる石巻市。2011年の東日本大震災で甚大な被害を受け、その復興の歩みの中で誕生した会社が「石巻うまいもの株式会社」です。

石巻うまいもの株式会社様①
写真:石巻うまいもの株式会社が運営する「石巻うまいものマルシェ」。石巻市水産総合振興センター1Fにあります

 2014年、石巻市内の水産加工会社を中心とした12社で「石巻うまいもの発信協議会」としてスタートし、高付加価値商品の開発やブランディングを行ってきました。3年の活動期間を経て、2016年、株式会社ヤマトミ、山徳平塚水産株式会社、湊水産株式会社、株式会社MCF、水月堂物産株式会社、株式会社丸平かつおぶし、株式会社カクト鈴木商店、末永海産株式会社、株式会社田伝むし、富士國物産株式会社の10社が手を取り、石巻ブランドの商材を扱う直営店の運営を開始。当初は直営店運営がメインでしたが、もともと高付加価値商品の開発を目指していたグループだったこともあり、「共同で新商品の開発をしよう」ということになったのだそう。

 商品開発の陣頭指揮を執ったのは、商品部会長の丸平かつおぶしの阿部真也さんと山徳平塚水産の平塚隆一郎さんでした。

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写真:(左から)丸平かつおぶしの阿部真也さんと山徳平塚水産の平塚隆一郎さん。丁々発止のやり取りをするおふたりは、なんと高校の同級生なのだとか

 「10社それぞれ強みを生かした商品で、素材を活かしつつ常温で持ち歩けるものが条件。それでいろいろ話していくうちに、お茶漬けがいいんじゃないかという風になってね」と、阿部さん。平塚さんは「お茶漬けは10社中7社やっていて、レトルトの設備がない会社にはうちを使ってもらっているんです。設備投資をすると負担が大きいけれど、こうやって共同でやっているとそれぞれの会社の設備が使えるから便利なんですよ。将来的には、グループだけじゃなくて、ほかの石巻全部を巻き込みたいですね」と話します。それに阿部さんも「石巻全体を一個の工場にしたいよね」と笑顔をのぞかせます。

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写真:自社のレトルト技術を活用して、「石巻金華茶漬けシリーズ」の開発を牽引した、平塚さん

 港町ということで、震災前から多くの水産加工会社が立ち並んでいた石巻。こうして手を携える理由のひとつが「石巻ってこれっていう商材がないからなんですよ」と、平塚さん。「魚種が200種も揚がるから、人に『石巻って何があるの?』って聞かれると、『いろいろ・・・季節によってね・・・』なんて口ごもっちゃうくらい(笑)。商材がかぶるとライバルになるけれど、今ある10社中8社は業態が違う。さんま、ほや、海藻、たらこ・・・と、得意分野が違う。石巻の弱点でもあったところが有利に働いたんですね」。

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写真:山徳平塚水産の工場内。このレトルト技術が、今回の商品開発で大きな役割を果たしました

 こうして共同でお茶漬けの開発を始めることになりましたが「1食300円なんて売れるのか?っていうのが心配で。だから最初はうちと山徳さんで作って。銀鮭とさんまをセットにして販売してみたら、6000個売れたんですよ。『これだったらいけるかも』ってなったら、ほかの会社も乗り気になってきて(笑)」と、阿部さん。

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写真:「1食300円のお茶漬けが売れるのか心配だった」と話す阿部さん。現在、丸平かつおぶしが開発した「石巻銀鮭茶漬け」は、JAL国際線日本発ビジネスクラスの「2食目のアラカルト」に採用されるまでに!

 連携して作る最初の商品ゆえ、失敗できないというプレッシャーの中、平塚さんと阿部さんはサンプルを東京に持って行き、各ジャンルの専門家のアドバイスを仰いだそうです。「2日間、30人くらいの方々と意見交換させてもらって。でももう1日目でけちょんけちょん(笑)。今のデザインになる前だったんだけど、『味はいいけど、よくわからない』って言われましたね(平塚さん)。
 「ネーミングが『ほどるまんま』だったからね(笑)。これ、石巻の方言であったかいご飯という意味なんですね。方言を普及する意味でもいいんじゃない?ってうちらは思ったんだけど、みなさん曰く『方言の説明もしなきゃいけないし、なんの商品なのかもわからない』って」(阿部さん)。

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写真:専門家の意見をもとに、パッケージデザインを大人向けの高級路線に

 当初のポップなパッケージデザインを一新し、消費者の目線を大切にした高級路線に。ロゴマークには市の樹木である黒松と、石巻の象徴である金華山をモチーフに取り込みました。こうして、7社による7種類のお茶漬けと2種類のふりかけが完成しました。「それぞれの会社に販売チャネルがあったことと、『新東北みやげコンテスト』で特別賞を受賞したことで、売り込みやすくなりましたよね。商談のときは、自分のとこだけの商品を持って行ってもインパクトないから、他社のものも持って行くんです。すると、紹介したのに自社の商品が選ばれないっていう悲劇もたまに起こる(笑)」(平塚さん)。

 統一ブランドで販売することで得た強み。阿部さんは「本音で言えるようになるまで3年かかりましたよね。これまでは『まぁ、いいんじゃないですか』って言ってたのが『これじゃ売れない』『もっとこうして』と、研鑽できる場になりました」と話します。

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写真:「これからも、石巻から本物を届けたい」と話すおふたり。新作が楽しみです

 現在は、第二弾として「釜飯のもと」を考えているそう。「我々の強みを生かして、本物を提供したいですよね。十三浜のわかめをスープにしたり、あとは魚醤もいいかな、と。輸出できていないほやで魚醤を作ったりとか。あとは、ほやのビスク。殻を使うんだけど、鮮度が命だから、ここでしかできない商品じゃないですか」と、平塚さん。

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写真:石巻ならではの魚種の多さが幸いして、獲れる魚が変わっても問題ないとのこと

 近年は、温暖化によって水揚げされる魚種も変わってきているといいます。「天然のぶりが三陸で揚がるようになったんですよ。ワタリガニが日本一獲れた年もあるし。それまで少量だった魚が主力になってきているのが現状です。魚種が変わってくると、我々も変わらざるを得ないけれど、石巻は200種以上の魚が揚がるのが特徴だから、その中身が変わるだけ」(平塚さん)。

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写真:「石巻銀鮭茶漬け」。ゴロッとした切り身が入った贅沢な一品です

石巻うまいもの株式会社様⑩
写真:「石巻さんま茶漬け」。骨まで柔らかくなった甘辛のさんまとお出汁の絶妙な組み合わせは、「ひつまぶし」を思わせる味わい

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写真:「石巻さんま茶漬け」を、稲庭うどんと一緒に。ご飯だけじゃなく、うどんやそばなどと組み合わせてもおいしくいただけます

石巻うまいもの株式会社様⑫
写真:「石巻ほや茶漬け」を茹でたパスタを和えれば、「簡単ほやパスタ」の完成!彩りに添えたバジルとほやの相性も抜群です

石巻うまいもの株式会社様⑬
写真:この「石巻金華茶漬けシリーズ」は、高速道路のサービスエリアやJR仙台駅のお土産店のほか、「石巻うまいものマルシェ」で購入することができます

 地の強みを活かしつつ、これからも「石巻うまいもの株式会社」はワクワクするような「食」を全国の食卓に届けていくことでしょう。第二弾、第三弾の発売が待ち遠しいのは、私だけではないはずです。

石巻金華茶漬けシリーズ(よいもの)

石巻金華釜めし(よいもの)

石巻うまいもの株式会社
(石巻うまいものマルシェ)

〒986-0022 宮城県石巻市魚町2丁目12-3
石巻市水産総合振興センター1階
※石巻市場前に無料駐車場あり
TEL 0225-25-4363
営業時間 日曜日 10:00~15:00
     月曜日・水曜日~土曜日
         9:00~16:30
定休日  火曜日
URL http://umaimono-ishinomaki.com/
第81回ジャパン・フード・セレクション食品・飲料部門グランプリ受賞(2024年11月)

うまいものマルシェ

取材/2019年9月

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