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「売れる」とは「買われる」こと~解決“ヒント”はお客様から|コラム#53

  • 販路開拓・販売促進
  • 新商品開発・新事業展開

2026.02.18

みなさん、こんにちは。
よく「売れるモノづくり」とか、「魅力的な売り方」とか聞きますね。でも、これは“売る側”から見た考え方。本当に売れるかどうかは、“買う側”の視点がなければ取らぬタヌキになりがちです。
では、何が違うのか、売れない理由を考えてみましょう。

架空のお弁当店「駅前亭」の例

例えばお弁当。(*名称は架空です)
出張販売で人気の駅前亭*のウリは、

  • 炊き立てご飯使用
  • 8種類の味を楽しめるおかず
  • 味噌汁付き
  • 680円

の幕ノ内弁当を看板商品にしてきましたが、少しずつ売上が減ってきました。

そこで、(A)おかずを変えてみたり、(B)おかずを10種類に増やしたりしましたが、一瞬売上が増えてもまた減っていくのです。ついに価格を600円に下げてオトク感を出すことにして、その代わりにおかずを6種類に減らしました。
その結果、(A)や(B)よりは売上が増えましたが、今度は利益が減ってしまいました。
そして、新規のお客様が増えましたが、リピーターさんは減ってしまいました。

これには2つの理由があります。
新規のお客様はそもそも600円のオトク弁当だから来たこと、対してリピーターさんは多種類のおかずが楽しめる弁当だから続いていたからです。
つまり、駅前亭の“ウリ”=売り手が考えたセールスポイント*と、お客様が“カイ”と思うバイイングポイント*がだんだんマッチしなくなってきたことが原因なのです。
(*和製英語です。正しくはセリングポイントとキーオブバイイングファクターといいます)

このように、売り手・造り手視点で訴求することをプロダクトアウトといい、買い手・使い手(食品なら食べ手)の視点を取り入れることをマーケットインといいます。
マーケットインする一番の方法は、実際にマーケットに聞くこと=教えてもらうことです。

そこで、お客様アンケートを実施した結果、いろいろなことが分かりました。

①さめても美味しいご飯にしてほしい。
お店では炊き立てでも、買って食べる頃にはさめているので、実際のウリにはなっていませんでした。

②おかずの味も品数も良いが、隣同士のおかずの味や色が移るのが気になる。
駅前亭は脱プラ宣言して容器は紙製、おかずもプラスティックの仕切りやビニールのカップを使用しないのですが、とはいえ、おかずが接しあう部分(入れ方)に配慮が足りませんでした。

③いろいろな味を少しずつ楽しめるのは良いが、一方でメインのおかず感がないので、コレを食べたいと思わせる主役のメリハリがほしい。
幕ノ内のおかずは少量多種ならではという固定観念に捉われて、実際は各種類のおかずが都度入れ替わっていても全体的には毎度同じように見えてしまうことや、牛タン・牡蠣などに代表される単品主張型のインパクトを意識していませんでした。

④味噌汁サービスは嬉しいが、食べる頃にはさめている。
毎回、同じ味噌汁なので飽きる。
ほとんどのオフィスに給湯やポットはあっても、電子レンジがなかったり、あっても1台のため、限られた休み時間なので並ばずに、さめたまま食べるケースが多いこともわかりました。
また、同じ味に飽きていても、わざわざ別な味噌汁を買いにまでは行かないこともわかりました。

そこで、駅前亭は

❶お米のブレンドを工夫して、さめても美味しいご飯に改良しました。

❷おかずの汁気を丁寧に切り、色・味が濃いおかずの間を大葉や水菜などで仕切りました。

❸おかずを、メイン1品・副菜5品の日替わりにして、メインを打ち出した「肉の幕の内・鶏の幕の内・魚の幕の内」としてリニューアルしました。

❹味噌汁サービスは、粉末の味噌汁やワカメスープなど数種類を用意して、好きな物を選べるようにしました。

❺以上を730円に値上げして、代わりに次回使える50円券をお弁当1個に1枚付けました。

その結果、新規も増え・リピーターさんも戻り始め、売上が1割・利益は2割増えました。

駅前亭の社長は言います。
「美味しければ良いと思っていた。売れなくなってきた時は、もっと美味しくすれば戻ると考えたが、それでも増えずついに値段を下げてしまった。」

実は、「美味しい」というのは当たり前の基本価値=必要条件なので、それだけでは差別化=十分条件にはなりません。
今回取り組んだ小さなカイゼンの積み重ねが付加価値となって、実を結んだのです。
そのためには、プロダクトアウトの“売り手発想”で対策するのではなく、マーケットインの“買い手着想”で解決することが有効です。

買い手側の気持ちになることは難しくありません。みなさん自身がいろんな店のお客様なのですから。
その感覚で、自分が・自分の店のお客様だったらどう思うか?鏡にて照らして見つけることが大切です。

なお、アンケートを取ったことがあるけど役に立たなかったという話も聞きますが、それは役に立たないアンケートを取ったということです。正しい設問・選択肢を設計すれば、きっと答えが見つかります。アンケートの方法や設問のご相談があれば、どうぞお問い合わせください。

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大志田 典明

マーケティングプロデューサー

大志田 典明

現場実践力で事業成長を応援!中小企業ならではの持ち味を活かした課題解決を支援しています。多彩なケーススタディから知見する事業戦略の専門家。