中小企業応援窓口オーエン

杜の都の奮闘記:人手不足でもあきらめない!杜の都の中小企業が実践した職場革命|コラム#40

  • 資金繰り・事業計画
  • 人事労務・採用育成

2025.06.18

こんにちは、コンサルタントの小田川です。

近年、中小企業を取り巻く環境はますます厳しくなっています。人材不足が深刻化し、働き方改革の波も押し寄せるなか、そのしわ寄せを受けているのが中小企業なのです。
でも、希望がないわけではありません。
今回は、私たちオーエンにご相談くださった企業の一例を、物語としてご紹介します。
「これ、うちのことかも…?」と感じたら、ぜひ一度オーエンにいらしてください。
それでは、「杜の都商事」の業務改善物語、はじまり、はじまりー。

 

1. 現場の悲鳴:働き方に限界がきている

仙台の閑静な住宅街に根ざした中小企業、「杜の都商事」は、創業以来堅実な経営を続けてきました。地元の取引先からは厚い信頼を寄せられ、社員たちも一丸となって日々業務に取り組んでいます。しかし、その会社の内側には、誰にも相談できずに抱え込む「現場の悲鳴」が静かに広がっていました。
「もし休んだら、誰が私の仕事を代わりにやるのだろう?」
「この重要な書類、またどこかに紛れてしまった…」
「承認の回覧が遅くて、出張の手配が間に合わない!」
こうした声は、総務・経理のバックオフィス業務の現場から頻繁に漏れていました。彼女たちの業務は「属人化」が進み、まるで“なんでも屋”のような状態に。紙ベースの書類やExcelの手作業に依存し、あいまいな役割分担により「これは誰の仕事か」という線引きが曖昧なまま。さらに、業務量の多さからくる断りづらい雰囲気に押されて、誰もが気軽に助けを求められない状況でした。

社員の多くは、心身ともに限界を感じていました。遅くまで残業し、ミスを恐れながら書類の山と格闘し、誰にも見えないところで疲弊していく。そんな彼女たちの努力は、組織の表面からは見えづらく、感謝や評価がなかなか返ってこない日々。まさに“職場の見えない闇”でした。
その中でも、青葉さん(仮名)は、月に一度の同期女子会を唯一の気分転換の時間としていました。彼女たちは職場のリアルな話を語り合い、互いの悩みを共有します。
「えっ、まだ勤怠管理は紙でやってるの?うちの会社はクラウド連携で自動で反映されてるよ。」
「請求書の処理?うちはもうボタンひとつで終わる。午前中には片付くのに。」
「それ全部青葉ちゃんがやってるの?誰も手伝ってくれないの?」
仲間の話を聞くたびに、青葉さんは心の中で「なんで私だけこんなに疲れてるんだろう」とつぶやかずにはいられませんでした。会が始まる頃にはいつも遅刻し、疲労の色が顔ににじむことも当たり前になっていました。

 

2.背中を押したのは「今すぐできること」

そんなある日、仙台市が運営する中小企業応援窓口「オーエン」から届いた案内が、青葉さんの目に止まりました。それは「ここから始める業務改善」というセミナーの案内。半信半疑で参加してみると、講師の小田川先生の言葉が青葉さんの心に響きました。
「新たな人材の採用は確かに時間がかかります。しかし、今の業務プロセスを見直し改善することは、今日からでも始められるのです。」

このシンプルで力強いメッセージが、青葉さんの背中を押しました。変わりたいけど何をどうしたらいいかわからなかった彼女にとって、まさに希望の光でした。

 

3.まずやるべきは「現状を知る」

青葉さんは同じ思いを持つ仲間とともに、小さな「改善チーム」を立ち上げました。最初のステップは、日々の業務の“棚卸し”です。何気なく行っていた作業や習慣を一つひとつ書き出し、どんなムダや無理があるのかを可視化しました。
「書類を探す時間だけで毎日10分かかっている」
「印刷して押印して、また戻すという繰り返しに30分かかっている」

こうした小さな“ちりつも”が、累積して残業や疲弊の原因になっていることがわかりました。自分たちの業務を客観的に見つめ直すことで、改善の第一歩が見えてきたのです。

 

4.問題の本質を深掘る:課題の根っこを見つける

しかし、「何がムダか?」を洗い出すだけでは根本解決にはなりません。そこでチームは、「なぜそれが起こるのか?」を何度も問いかけ、課題の本質に迫りました。
なぜ確認や承認に時間がかかるのか?
なぜ誰が判断するのか曖昧なのか?
なぜ情報が分散していて把握に時間がかかるのか?
こうして浮かび上がったのは、業務フローの構造的な問題でした。誰が何をするのか明確にされておらず、情報は散乱し、確認作業が複雑に絡み合っていたのです。

 

5.最大のボトルネック:スタンプラリー承認フロー

特に深刻だったのが、いわゆる「スタンプラリー承認フロー」でした。出張や経費申請のたびに、書類が社内の机から机へと渡り歩き、誰が確認し、誰が承認するのか分かりづらく、業務は遅延の連続。まるで社内で承認スタンプを集めるラリーのようでした。

そこで青葉さんたちは、「誰が確認し、誰が承認するか」を明確にした権限分担の一覧表を作成。これにより、不要なステップや重複した承認作業を省く仕組みへと切り替えました。
この改革により、承認がスムーズに降りるようになり、営業との連携も格段に良くなりました。現場からは「こんなに早く決裁が降りるのは初めて」と驚きの声が上がりました。

 

6.改善は一歩ずつ、見える化しながら進める

「一気に全てを変えようとして失敗するより、小さく始めて早く回すことが大事」-この教訓のもと、改善チームは地道な取り組みを続けました。
例えば、共有フォルダの階層ルールを統一し、ファイル名も決めてわかりやすく。業務マニュアルのたたき台も作り、少しずつ全員で共有しました。こうした「できた!」という成功体験を積み重ねて、全員が成果を実感できるようにしました。
成果は「見える化」することでさらに社内の士気を高め、新たな改善意欲へとつながりました。

 

7.自分たちで職場は変えられる

数ヶ月後。書類探しに費やす時間は激減し、残業時間も明確に減りました。承認スピードの向上により、営業からの信頼も高まり、職場全体の雰囲気は明るく変わりました。
青葉さんは言います。
「誰かが入ってくるのをただ待つんじゃなくて、今いる私たちで動くのが一番の近道だったんだ」
この言葉は、まさに自分たちの手で環境を変えた実感の表れです。


業務改善とは単なる効率化ではありません。
それは「自分たちの働き方を自分たちで守ること」。
人材不足が深刻な時代だからこそ、自分たちで仕組みを変え、より働きやすい職場を作ることが求められています。
杜の都商事の青葉さんたちのように、私たちもできることから一歩ずつ、現場発の変革を進めていく―それが、これからの働き方のヒントになるのではないでしょうか。

相談予約は電話またはフォームで承ります。

022-724-1122 相談予約フォームはこちら

小田川 潤

コンサルタント

小田川 潤

ITを活用した業務改善や生産性向上を応援!バックオフィスから営業部門の業務改善、新規事業立ち上げや社内のDX推進などの幅広い支援実績を基に、様々なご提案をしながら課題解決に向けてサポートします。