こんにちは。デザイナーの草野です。
「良い製品をつくっているのに、なかなか売れない」「サービスの魅力をうまく伝えられない」──こうした声を、地域の中小企業の方々からよく耳にします。そういう場合、原因は必ずしも品質や価格にあるのではなく「見せ方」や「伝え方」に課題があるケースが多いのです。そこで力を発揮するのが、ブランディングとプロモーション、そしてデザインです。今回は、お客さまに「伝わる」デザインとは何なのか、お話したいと思います。
ブランディングとは「信頼を築く仕組み」
ブランディングとは、すべてのステークホルダーに自社(製品・サービス)の“共通の価値とイメージ”を持ってもらうための取り組みを指します。ここでいうステークホルダーとは、企業や組織の活動によって影響を受ける、または影響を与える可能性のあるすべての利害関係者です。お客さまだけでなく、取引先、従業員、地域社会、さらには金融機関や行政なども含まれます。
「ブランド」と聞くと、多くの人は大手企業や高級品をイメージするかもしれません。しかし、本来のブランドとは「お客さまがその会社や商品に抱く信頼や安心感」のことです。中小企業にとっても、ブランドは十分に意識すべきテーマです。
ブランドを持つことのメリットは明確です。
まず、価格競争に巻き込まれにくくなります。同じような商品やサービスがあったとき、消費者は「信頼できる会社」「好感を持てる会社」を選びます。また、ブランドを確立できればリピーターを増やし、紹介による新規顧客の獲得も期待できます。つまり、ブランドは売上や利益に直結する「見えない資産」なのです。
プロモーションは「誰に・何を・どう伝えるか」
次に重要なのがプロモーションです。中小企業が陥りやすいのは、「良い商品やサービスを作れば自然に売れる」という思い込みです。残念ながら、どんなに素晴らしい商品でも、相手に伝わらなければ選ばれることはありません。
プロモーションの基本はとてもシンプルです。
1.誰に届けたいのか(ターゲット)
2.何を伝えたいのか(強み・価値)
3.どのように伝えるのか(手段・媒体)
例えば、若い世代にアプローチするならSNSが効果的かもしれません。一方で地域のシニア層に向けたサービスなら、ポスティングや新聞の折込チラシのほうが届きやすい場合もあります。大切なのは、自社の強みとターゲットを正しく見極め、最適な方法を選ぶことです。
デザインは「見た目」ではなく「伝える力」
デザインは、単なる見た目の美しさを追求するものではありません。「カッコイイから」という理由だけで作るデザインはNGです。重要なのは「伝えたいメッセージを効果的に見せること」。さらに忘れてはならないのは、お客さまは会社の外にいるという視点です。社長や担当者の好みだけでデザインを決めてしまうと、顧客に届かないものになりかねません。
デザインを構成する3つの要素
効果的なデザインを考えるときは、次の3つの要素を意識しましょう。
1.VISUAL:キービジュアル
写真/イラスト/タイポグラフィーなどを通して、商品やサービスの魅力を直感的に伝えることが大切です。プロの写真を使うだけでも印象は大きく変わります。
2.COLOR:キーカラー
色は心理的な効果を持ちます。たとえば青は誠実さや清潔感、赤は情熱やエネルギーを表します。会社(お店)・ブランド・製品(サービス)の世界観を表現するカラーで印象を統一することが大切です。
3.FONT:キーフォント
メッセージの世界観を正しく伝えるフォントになっているかに注意してみましょう。「読みやすさ」「伝わりやすさ」だけでなく、フォントのキャラクターを理解することが重要です。フォントは「声のトーン」に似ています。堅実さを出したいなら明朝体、親しみやすさを出したいなら丸ゴシックなど、目的に応じて使い分けましょう。
これらの要素を戦略的に組み合わせることで、伝えたいメッセージを視覚的に強く届けることができます。
よくある失敗と改善のヒント
中小企業の広報・販促でよく見られる失敗は、大きく2つに分けられます。
1.情報を盛り込みすぎる
「せっかく作るのだから、伝えたいことを全部入れたい」と考え、結果的に情報が多すぎて読み手に伝わらなくなるケースです。チラシやWebサイトは「まず読んでもらうこと」が大前提です。要点を絞り込み、「詳しく知りたい人はWebへ」「問い合わせをしてもらう」など、段階的に伝える工夫が必要です。
2.自分たち目線で作ってしまう
「自分たちはこのデザインが好きだから」「会社の伝統だから」といった理由で決めると、お客さまにとって分かりにくいものになりがちです。改善策はシンプルで“お客さま目線”で考えること。そして第三者の意見を聞くことです。社内だけで判断せず、専門家や顧客の声を取り入れることで、より効果的なアウトプットが生まれます。
小さな一歩から始めてみる
ブランディング・プロモーション・デザインは、それぞれ独立して存在するものではなく、三位一体で機能することで成果を生みます。中小企業こそ、自社の強みを「言葉」と「デザイン」で整理し、分かりやすく伝えることが差別化につながります。
大切なのは、最初から完璧を目指さないことです。小さな改善でも十分に効果があります。例えば、チラシのデザインを見直す、会社案内の言葉を整理する、Webサイトに写真を追加する。それだけでもお客さまの印象は変わります。
まとめ
中小企業にとって、ブランディング・プロモーション・デザインは決して遠い存在ではありません。むしろ限られた資源を有効に活かすためにこそ、欠かせない考え方です。今回のコラムが、日々の広報活動や販促のヒントになれば幸いです。「伝え方を工夫したい」「デザインを活用してみたい」と感じたときは、ぜひお気軽にご相談ください。
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