2020年8月28日

株式会社バンザイ・ファクトリーは、仙台市産業振興事業団が主催する
「新東北みやげコンテスト」の受賞企業です。
第6回 「椿茶ミニパック」優秀賞



東日本大震災によって、甚大な被害を受けた東北の沿岸部。そんな被災地のひとつである岩手県沿岸南部の気仙地区で、人々のかすかな光明となったのが、力強く生きる椿の姿でした。

椿茶① 写真:人々を勇気づけた、三陸の椿

塩害によって植物が枯れていく中、多くの椿は枯れずに残り、翌年にはまた花を咲かせたのです。
そんな、人々を勇気づけた椿の葉を使ってお茶にしたのが、株式会社バンザイ・ファクトリーです。代表取締役の高橋和良さんは「震災当時、私たちは内陸部に工房と自宅を構えていました。ですが、恩人のいる陸前高田で商品のひとつでも作って、ひとりでも働く人をつくってお役に立ちたいという思いから、移転、移住を決めたんです」と、話します。

image 写真:手摘みで椿の葉を収穫します

陸前高田市では、椿油を絞っていた製油所がありました。その製油所が事業を再開し、椿油を使った冷麺やパスタソースを作り始めました。それが、バンザイ・ファクトリーの陸前高田市でのスタートとなりました。ところが、「復興需要で椿油が手に入らなくなってしまって。仕方なく一度は椿から離れましたが、やっぱり離れたくないという思いがあったんですよね。それで、椿について調べ始め、九州に椿茶というものがあるというのを知ったんです」。
ところが、購入してみたその椿茶は、緑茶が主体で椿の葉は1割しか配合されていなかったのだそう。「“牛乳”っていってるのに、ヤギの乳が9割みたいなものじゃないか、と。だったら、自分たちで作ろう!となったのがきっかけなんですよ」と笑います。

椿茶③ 写真:収穫した椿の葉は、一枚一枚きれいにします

その後、椿のお茶は発酵しないことが判明。「発酵しないとお茶にならないよね…と、がっかりしていたら、働いていた女性が『ハトムギ茶とか、ほうじ茶は煎っているよ』と教えてくれて。それで焙煎茶の作り方を勉強して、椿の葉を取ってきて、きれいにして、磨いて、養生させて、乾燥させて、煎る…というのをやってみたんです。でも、全くおいしくなくて(笑)」。
そこから、どうしたらおいしい椿茶ができるのか、試行錯誤の日々。「最初は、山側で自生している椿から取ってきていたのですが、ある日、市のほうから『市の土地にある椿を取ってもいいよ』と言ってもらって。海の近くの椿の葉を摘んで作ったら、これがおいしいじゃないですか。後から知ったのですが、小豆島(*)のオリーブがおいしいのは、根っこに海水を薄めたものをまいているからで、ミネラル豊富な土になって、虫もつかないんだそうです」。
*香川県。瀬戸内海・播磨灘にある島で、オリーブの国内栽培発祥の地として知られている

椿茶④ 写真:じっくり乾燥させるのが、おいしさの秘訣です

摘んだ葉はきれいにして、3日ほど養生させた後、48時間、電気乾燥機で50度程度の温度でゆっくりと乾燥させます。「急激に乾燥させると葉が傷んでしまうんです。時間をかけたら、煎ってもおいしくなったんですよ」。こうして出来上がった「椿茶」を、2015年にリリース。

椿茶⑤ 写真:自然な甘みがありつつ、糖分ゼロなのがうれしい椿茶

2019年には「もっと多くの人に手に取ってほしい」と、ミニパックを開発。これが、「第6回 新東北みやげコンテスト」で優秀賞を受賞しました。

椿茶 写真:椿茶ミニパックは、「第6回 新東北みやげコンテスト」優秀賞を受賞しました

この「椿茶」、実はバンザイ・ファクトリーの人たちだけで作っているものではありません。「2017年に入ると、被災したスタッフのほとんどが仮設住宅から一般住宅に引っ越しました。また、年齢的なことや生活が落ち着いてきたから…と、お母さんたちがひとりずつ辞めてしまったんですね。それはそれでよいことなのですが、人手は足りなくなってしまいました。そしてそのころに、陸前高田市では震災をきっかけに引きこもりになってしまった人たちが多いという社会課題が浮き彫りになっていたのです。そういう方たちを応援しようと、『ユニバーサル就労支援センター』というものができたのですが、ただ『出てきてよ』と言っても出てこないですよね。センターさんが相談に来られたので、私たちから『椿の葉っぱを取ってきて一次加工をさせてみては?』と提案しました。『それをキロいくらで買い取るよ、お小遣いになるよと呼び掛けてみては?』と。すると、最初は1、2人だったのが20人、30人と登録して来てくれるようになって。2019年には、地元の新聞に『椿茶がきっかけで気持ちが前に向くことができて、就職することもできた』という記事が連載されました。これは、うれしかったですね」。

椿茶⑦ 写真:黄金色が美しい椿茶。カフェインレスなので、妊娠中の方や小さなお子さん、高齢の方でも安心です

そのうち、記事を見た障がい者施設の方からも「ぜひやらせてほしい」という話があり、障がい者施設、就労支援センター、高齢者施設の方々が、「椿茶」の生産に関わることになりました。「目の前にあることをやっているうちに、なぜか人が集まってきてくれて。買ってくださる方はそんなことは思わないで飲んでると思いますが、今のところうまく循環しているな、と思いますね」と、高橋さん。
今後は「椿茶粉末と三陸名産のわかめの芯を乾燥させて粉にしたものと混ぜ、『椿茶とわかめ塩』を作っています。今後販売予定ですので、楽しみにしていてください」とのこと。

椿茶⑧ 写真:凍らせたキウイ、オレンジ、桃に椿茶を注ぎ入れ「フルーツティー」に。解凍されるときに沁み出す果物のおいしさと椿茶の甘みがベストマッチ

椿茶⑨ 写真:豚肩ロースを椿茶のティーバッグ、しょうが、酒、しょうゆ、砂糖、塩で煮込んで煮豚に

椿茶⑩ 写真:やわらかくてジューシーな「椿茶の煮豚」。タレは、煮汁を少し煮詰めて、水溶き片栗粉でとろみをつけました

さまざまな人が携わり、それぞれがハッピーになりながら、多くの人に愛されている「椿茶」。椿のストーリーとともに、東北みやげの定番となる日も遠くはないでしょう。

│商品の詳細はコチラ│



株式会社バンザイ・ファクトリー

所在地 〒022-0002 岩手県大船渡市大船渡町字茶屋前7-7
TEL 0192-47-4123
URL https://www.sagar.jp/

バンザイファクトリーロゴ

撮影/堀田 祐介

東北大学法学部卒業後、仙台市内の商業写真撮影会社に就職。写真の道に進む。アシスタントを経てカメラマンとなり、物撮、人物撮影など、写真全般にわたり様々な仕事をこなしながら10年勤務。その後準備期間を経て独立、現在はフリーランスとして、プロバスケットボール・仙台89ERSオフィシャル(初年度から現在まで。来季で15季目)のほか、雑誌媒体の取材(街ナビプレス・仙臺いろはマガジン・ウォーカー・るるぶ)、商業写真撮影、番組用写真撮影と各方面で活躍。

堀田さんトリミング



取材/2020年8月