前編|マッチ箱マガジンで巡る松島さんぽ

2017年9月15日

仙台にゆかりのあるイラストレーターたちがつくり上げた「マッチ箱マガジン」。それは、マッチ箱に入った小さな小さなガイドブック。手のひらにすっぽりと収まる小さな箱の中に、宮城への大きな愛が詰まっています。

まずは、マッチ箱マガジンの生みの親である株式会社佐々木印刷所 代表取締役の佐々木英明さんにインタビューをしました。

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|ずっとやりたかったことをマッチ箱に込めて

印刷工場がそばにある環境で育ったので、子どもの頃からいろんな印刷物を見るのが好きでした。マッチ箱の印刷に興味を持ったのは高校生の頃。昔は喫茶店やラーメン屋など、いろんなお店にマッチ箱が置いてありました。それをずっと集めていて。まあ、切手収集みたいな感じですね(笑)。その頃から「いつか自分でもつくってみたいな」と思っていました。

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全部で20 冊ほどあるという、マッチ箱のスクラップブック。
これがマッチ箱マガジンの原点。

|震災後の宮城を盛り上げていきたい

形になったのは、仙台市の「クリエイティブ・プロジェクト助成制度」で支援を受けたことがきっかけ。「マッチ箱の中にガイドブックとグッズを入れて、観光地を盛り上げたい」と思い、応募したんです。震災があったけど、たくさんの魅力がある宮城にぜひ来てほしい。しかし、沿岸部は復興の途中だったので、まずは山沿いの観光地から来てもらえたらと思いました。「山といえば温泉地、さらに温泉地といえばこけしだな」と、こけしで有名な作並・秋保・鳴子・遠刈田・白石の5か所をピックアップし、そこを仙台にゆかりのあるイラストレーターのみなさんに旅をしてもらいながら思い思いに描いてもらいました。

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山編には付箋、沿岸部編にはクリップのおまけ付き。
ガイドブックはテーマに合った紙質を選び、風合いを引き出している。


|「宮城ってこんなにいいところなんだ」と再確認できた

イラストレーターのみなさんには、「本当にいいと思ったものを描いてほしい」 とだけお願いしました。出来上がったものを見ると、その場所の雰囲気や空気が 伝わってきます。なんだか、僕もその土地がどんどん好きになっていきました。 ちなみにガイドブックだけでなくグッズをつけたのは、旅が終わった後も ずっと手元に置いてもらいたかったから。「グリコのおまけ」みたいなものです(笑)。

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株式会社佐々木印刷所 代表取締役の佐々木英明さん。
「マッチ箱も付箋も、すべて手作業でつくっています」


|マッチ箱マガジンと旅をしてもらうこと。それが一番の願い

第1弾の山編に続き、沿岸部編や仙台時間編をつくりました。最近ではマッチ箱にこけしの形のクリップを入れた「こけしクリップ」へと展開しています。今後の展開は…、実はまだ決まってないんです。次は、“これがやりたい”ってものがピカッと光った時かな。マッチ箱マガジンの願いは、実際に手に取ってそこに行ってもらうこと。そしてさらに、「おみやげとして手にした方も実際に足を運んでみる」という流れになってくれたらいいですね。

マッチ箱マガジン

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誕生秘話を経て、さあいよいよ旅へおでかけ! マッチ箱マガジンを片手に、松島編を担当したイラストレーター佐藤ジュンコさんと松島さんぽへ出かけました。

| 佐藤ジュンコさんってどんな方?

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●PROFILE
福島県出身、仙台市在住。書店勤務時代に不定期発行されたフリーペーパー「月刊佐藤純子」が評判を呼びイラストレーターの道へ。 マッチ箱マガジンでは「松島」「白石」「仙台時間(21 時~24 時)」を担当。 著書に『月刊佐藤純子』(2015年)、『佐藤ジュンコのひとり飯な日々(コーヒーと一冊)』(2015年)、『仕事場のちょっと奥までよろしいですか?』(2017 年)など。

|松島こうれん本舗 紅蓮屋 心月庵

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まずは多くの観光客で賑わう海岸沿いの大通りから北へ進み、「松島こうれん本舗 心月庵」へ。 ササニシキのやさしい甘さが広がるお煎餅「松島こうれん」と、やさしい笑顔の星 久美子さんが出迎えてくれました。

|ジュンコさんが星さんへインタビュー!

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ジュンコ:「松島こうれん」はシンプルでやさしい味だから、ついいっぱい食べちゃいます(笑)。
星さん:そう言っていただけるとうれしいですね。これね、針金のような細い鋼鉄に挟んで焼き上げるんですけど、焼く釜によって火加減を見極めるのが難しくて…。それに同じスタッフがつくった生地でも、毎日微妙に焼き上げる時間が変わってくるんです。そのことに気付いたのが10年くらい前。社長に伝えたら、「当たり前だ!」なんて言われちゃいました(笑)。
ジュンコ:ふふふ。でも、それだけ熟練の技が必要なんですね。

|「松島こうれん」の楽しみ方、まだまだあります!

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ジュンコさんが愛用している手ぬぐい。
「色が渋くて素敵ですよね」

星さん:そのまま食べてもおいしいですけど、砕いてサラダのトッピングにするのもいいんですよ! 野菜とお米が一緒に取れる、すごくヘルシーなサラダになるんです。好きなジャムやソースにディップするのもおすすめです。
ジュンコ:そんなおしゃれな楽しみ方もあるんですね! 知らなかったなあ。
星さん:ほんのりとした甘さだから、他の素材の味を邪魔しない。味噌汁やスープに溶いてもいいんです。
ジュンコ:どこか町内の飲食店でそのメニューを食べられたらいいですね。
星さん:実は近い将来、ここのお店の一部を喫茶スペースにしたいな、と思っているんです。 「海岸沿いは人通りが多くて疲れちゃうけど、ここは静かでホッとする」なんておっしゃる方も多いんです。 だから、「松島こうれん」とお茶を楽しみながら、ゆっくり休んでもらえたらいいなって。それが私の夢なんです。

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米と上白糖、そして塩のみで仕上げた「松島こうれん」。
口に入れると、淡い甘さを残しふわりと溶けていく。




松島こうれん本舗 紅蓮屋 心月庵

紅蓮尼がお供え用の米を粉にし、煎餅として焼いたことが由 来の「松島こうれん」が人気。ふわりとした食感と、口の中に 広がる素朴な甘さが世代を問わず愛されている。

住所:宮城郡松島町松島字町内82
営業時間:8:30~18:00
定休日:無休
TEL:022-354-2605
URL: http://matsushimakouren.com

松島こうれん

フリーライター 及川 恵子

1982年気仙沼生まれ。石巻育ち、仙台在住。大学で建築を学んだのち、出版社勤務を経てフリーライターへ。グルメ取材、インタビュー、レビュー、レポート、なんでもお任せあれ。知ること、書くこと、人に会うことが好きです。それと、音楽と旅と猫も好き。
mail:keikooikawa[at]me.com

及川プロフィール