2021年6月11日

営業活動のICT化~クラウド・データベースの活用|コラム#26

営業活動のICT化~クラウド・データベースの活用|コラム#26

こんにちは、中小企業診断士・ITコーディネータの青沼泰彦です。前回のコラムでは、経営におけるIT活用の大きな流れと活用分野について概説しました。今回は、営業活動のICT化について、具体的にお話します。

ポイント

クラウド上で顧客情報・商談情報・製品情報などを共有することにより、営業活動を大幅に効率化することができます。表形式データなどのファイル共有から、本格的な業務データベースの構築まで、さまざまなシステムがあります。

営業活動のICT化の難しさ

経営へのICT導入は、1980年代から財務管理や給与計算、販売管理(売掛管理)などから本格化しましたが、営業活動のICT化はなかなか進みませんでした。
これには営業活動に特有の要因があります。

  • 営業担当者と顧客のつながりが強い(「○○社は私の顧客」)
  • 顧客情報や商談の進捗状況を、社内で共有するという意識がない
  • 外勤が多いため、営業日報や商談の記録を作成する時間が足りない
  • 外勤中でも情報を活用できる機器や通信環境が整っていなかった

これらの要因から、営業部門はICT化が遅れ、顧客情報や商談情報などが社内で共有されない状況が続いていました。
(営業活動の属人化:「○○社のことは△△さんに聞かないと分からない」「全社的な営業実績が把握できない」「各課それぞれが独自の顧客台帳を持っており整合性がない」・・・)

営業活動へのICT導入

そんななか、1990年代後半から、大手企業などで営業活動のICT化への取り組みが始まりました。営業支援システム(※1)を構築して、以下のような内容をデータベース化することにより、営業担当者が個人で抱えていた情報を共有して活用しようという狙いです。

  • 顧客の基本情報の共有
  • 商談の進捗状況の管理
  • 商談の成功事例の共有
  • 営業担当者の活動状況管理

しかし、長年続いた日本企業の営業体質を変えるのは難しく、せっかくシステムを構築しても、必要な情報が入力されないなど、十分な成果を上げたとはいえませんでした。
また当時のシステムは大がかりで、また社内での運用中心の閉じられたものが主体であったため、営業現場など社外から情報をリアルタイムで確認することは困難でした。

※1
SFA(Sales Force Automation)と呼ばれるシステム。

クラウドサービスの登場

このような営業活動のICT化を大きく変えたのは、クラウドサービスの実用化と普及です。
クラウドサービスは、インターネット上にソフトウェアやデータを保存することにより、社内と社外から利用できるようにしたものです(※2)。

クラウドサービス

※2
クラウドは、サービスモデルによって下記の3種に分類されます。
  1. IaaS (イアースまたはアイアース)
    サービスとして提供されるインフラストラクチャー。主な利用者はICTサービスの運営者。
  2. PaaS (パース)
    サービスとして提供されるプラットフォーム。主な利用者はソフトウェアの開発者・実装者。
  3. IaaS/PaaS型の代表的なクラウドサービス

    • AWS(Amazon Web Service:Amazonが提供)
    • Azure(Microsoftが提供)
    • GCP(Google Cloud Platform:Googleが提供)
  4. SaaS(サース)
    サービスとして提供されるソフトウェア。主な利用者は一般ユーザー(エンドユーザー)。
  5. SaaS型の代表的なクラウドサービス

    • GmailやGoogleドライブ(いずれもGoogleが提供する電子メールやファイル共有サービス)
    • OneDrive(Microsoftが提供するファイル共有サービス)

クラウドサービスモデル

クラウド上に顧客情報などを保存することにより、社内だけでなく外勤の営業担当者もデータを活用することができ、またデータのリアルタイムでの把握や一元的な管理が可能になります。

顧客データや見積書などのファイルをクラウド上に保存して共有するという簡便な方法から、本格的な営業情報システムまで、自社に合わせた仕組みを構築することができます。

クラウドサービス上に構築する営業支援システムは、Webブラウザや専用アプリなどを使ってデータに社内と社外からアクセスすることができます。(なお、このような仕組みを活用するためには、セキュリティの確保が重要となります。)
この仕組みによって、パソコンでも、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末でも、データを活用することが可能となりました。

また社外ネットワーク上にデータを保存することにより、社屋が災害に見舞われた場合でも大切なデータは別の場所で守られているため、情報資産の継続的な管理やリスク管理という面でも注目されるようになりました。

近年は、比較的少額な費用で導入でき、またデータベースの専門家でなくとも機能を追加したり修正したりすることができる”kintone” (※3)などで構築したシステムが、中小企業でも普及するようになりました。

※3
サイボウズ社が提供するクラウドサービス。「業務アプリ」と呼ばれるシステムを直感的に作成でき、チーム内で共有したり、社員間のつながりを活性化する社内SNSとしての使い方もできる。

クラウド・データベースで変わる営業活動

このようなクラウド・データベースを営業活動に導入することで、中小企業でもICT化を進めることができます。

  • 顧客情報の共有化
    営業担当者が各自で保有していた顧客情報をデータベース上で一元管理することにより、顧客情報の社内での共有、情報の冗長性の排除(誤りや重複のない顧客情報の管理)などが実現できる。
  • 製品情報の把握
    製品ごとの製造・在庫状況をデータベース上で管理することにより、営業先で顧客から納期などを聞かれても、その場で回答することが可能になる。
  • 商談進捗状況の管理
    個別の商談について、商談が現在、引き合い・見積もり・受注のどの段階にあるのかが、リアルタイムで把握できる。
  • 営業活動管理
    営業日報についても、会社に戻らなくとも出先から入力することが可能になり、またデータとして記録されるため、集計や管理も容易になる。
  • 関連情報の統一的管理
    現場の写真や図面、見積書などの書式もデータベースに保存できるため、必要なデータの閲覧や利用が容易になる。
  • テレワークへの対応
    社員の自宅からもセキュリティを確保したうえでデータベースを利用することにより、テレワークにも容易に対応できる。
活用事例1

顧客の連絡先・担当者名・購買履歴などをエクセル表で作成し、クラウド上に保存して利用する
一元化されたデータを利用するため、個人や部署ごとに顧客情報を管理する方法に比べ、情報の不整合や重複などを防ぐことができる。情報の共有者を一定の範囲に制限することもできる。一定容量まで無料で使えるクラウド・ドライブがあり、比較的取り組みやすい方法。

活用事例2

建築業や設備工事業などで、顧客情報と保有する住設機器などをクラウド上でデータベース化する
顧客から改修や修理の依頼があれば、データを参照して対象設備を確認でき、迅速な部材の手配や修理対応、現場での見積もりの概算作成などが可能になる。また定期点検や買い換えの提案などの積極的な営業に活用することもできる。

おわりに

このように、長年変えることが難しかった営業活動のあり方が、クラウド・データベースの導入により、共有化・オープン化され、個人が保有していた情報を会社の資産として利用する道が開けました。

当事業団では、営業活動の課題の抽出から営業情報システム導入までの幅広い支援を行っておりますので、活用をお考えの方はお気軽にご相談ください。

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中小企業診断士・ITコーディネータ 青沼 泰彦
青沼 泰彦

ITを取り入れた経営戦略の実践を応援!現場の状況を分析し、改善点を明確にしていきます。マーケティングにも精通し、東北全域で支援実績があります。

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