よいみせ│こけしのしまぬき

2021年9月27日

「こけしは地震で倒れる」を
逆手に取った商品開発


仙台市中心部、マーブルロードおおまち商店街に暖簾を構える「こけしのしまぬき」。観光客、地元っ子問わず人気の老舗(みやげ店)工芸品店で、こけしと東北の工芸品を取り扱っています。その創業はなんと、明治25年(1892)年。129年の間、この場所から東北のぬくもりあるこけしと工芸品の魅力を発信つづけています。
さらに、工人さんたちの協力を得て、自社オリジナルの商品も開発。「こけし缶」「明かりこけし」など話題のアイテムで新たなファンも獲得している、株式会社こけしのしまぬきの島貫昭彦社長にお話を伺います。

震度4程度の揺れでバタンとこけしが倒れると、その下部が明るく光ります。これが島貫さん考案の「明かりこけし」。この商品が世に出たのは2009年、東日本大震災の2年前の事でした。
島貫さんは「2008年頃って、こけしの売り上げが本当に減ってしまっていて、『このままでは、こけしがマズイ』というところまできていたんですよ。その年のDCキャンペーン*に合わせて、まずはずんだ、笹かま、牛タンをモチーフにした『三姉妹こけし』をつくりました。また、同じ年には岩手宮城内陸地震があったり、地震も続いていたんですよね。『地震がくるとこけしが倒れる、倒れるからこけしを買わない』というループに陥っていたタイミングで傾斜を検知すると光るユニットと出合ったんです。それで、『明かりこけし』をつくることにしました」と話します。

*DCキャンペーン=JRグループと指定された自治体、地元の観光事業者が共同で実施する大型観光キャンペーン

最初は、作並系こけし1種類のみの販売でしたが「鳴子も増やそうか…というタイミングで震災が起こったんです」。震災後には、「倒れて光るこけし」とメディアなどでも話題に。さらに2021年2月の深夜に最大震度6強の地震が起こると「夜だったこともあって『そういえば…』と思い出してくれた人が多かったようです」と、注文が続々と入ったといいます。




新しいものをつくることは、しぶとくやっていきたい

2010年頃から始まったこけしブームは、現在も継続中。こけしをモチーフとしたグッズも数多く販売される中、しまぬきでもこけしを缶に詰めた「こけし缶」をリリースし、話題となりました。「別の缶詰の商品開発をしていた時に『こけしを入れたらかわいいんじゃない?』という話になって。こけしと縁のない技術をミックスしてはいますが、こけし自体には手を加えていません」と、島貫さん。
こけしだけでなく、伊達政宗公の弦月を模したデザインをあしらった「仙台弦月」シリーズや仙台箪笥の技を駆使した「仙台キューブ」や「仙臺の刻」などさまざまなオリジナルの商品もおみやげや贈答品として、愛されています。



新型コロナウイルスの影響で観光客と人流が激減した2020年と2021年。当然のようにこけしのしまぬきにとっても大きな打撃となりましたが、島貫さんは「より来たくなるようなお店、ちょっと気になるぞという商品づくりは、コロナ前と変わらず積み重ねていきたい。新しいものをつくっていくことは、しぶとくやっていこうと思います」と、力強く話してくれました。
仙台の街なかで今日もお客さまと工芸品との出合いの場を提供しています。





*店内にある商品は売り切れとなっている場合もあります。

※販売サイト:https://shimanuki-shop.com/

こけしのしまぬき

所在地:〒980-0811 仙台市青葉区一番町3丁目1-17
TEL:022-223-2370
営業時間:10時30分-19時00分*詳細はHPをご確認ください。
定休日:毎月第二水曜日(8月を除く)/元旦
URL:https://www.shimanuki.co.jp/