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コロナ禍を乗り越える!みやげ品メーカーの販路戦略|コラム #17

  • 資金繰り・事業計画
  • 販路開拓・販売促進
  • 新商品開発・新事業展開

2020.12.23

こんにちは、中小企業診断士の玉置 光好です。

私たち仙台市産業振興事業団では、毎年「新東北みやげコンテスト」を開催して、東北の新しいみやげ品の審査と表彰を行っています。審査員は現役のバイヤーなどにお願いしているため、消費者やバイヤーの実際のニーズに適う商品が受賞する、というところが特徴です。
今回のコラムでは、この「新東北みやげコンテスト」の受賞商品の事例などから見えてきた、みやげ品メーカーの販路戦略についてお伝えしたいと思います。

第7回新東北みやげコンテスト

<コロナ禍がみやげ品市場に与えた影響

東北運輸局が発表した県別宿泊者数をみると、2020年3月以降、前年同月比を大幅に下回る月が続いています。直近では回復傾向にありましたが、GoToトラベルの全国一斉停止が決定されたことから、今後宿泊者数がさらに減少することが予想されます。

東北運輸局管内の県別宿泊者数(2020年における前年同月比)

引用:国土交通省東北運輸局記者発表資料より

この観光客数減少の影響を受け、東北のみやげ品メーカーも大きな打撃を受けています。当事業団にも、売上の減少や生産規模の縮小などの声が多く寄せられています。

そのような状況で2020年11月に開催された「第7回新東北みやげコンテスト」では過去最多となる273商品の応募があり、前回に比べ70商品以上の応募増となりました。背景としては、新しい取引先を見つけたり商品のPRを強化したりして、売上を回復させたいと考えるメーカーが多かったためと考えられます。

成長のための4つの戦略

売上を向上させるためにどのような戦略を取るべきかを考える時、「アンゾフの成長マトリクス」という考え方が役に立ちます。
「アンゾフの成長マトリクス」とは、「イゴール・アンゾフ」という経営学者によって提唱されたビジネスフレームワークです。「市場」と「製品」について、「既存」と「新規」で4つの象限に分類し、事業拡大の戦略を検討するものです。

アンゾフの成長マトリクス

この中で、もっともリスクが低いのは「既存の市場」に「既存の製品」を販売していく市場浸透戦略です。市場環境が良く、製品も他社に比べて競争力がある場合に採用される王道の戦略になります。

逆に、もっともリスクが高いのは、「新規の市場」に「新規の製品」を販売していく多角化戦略です。市場も製品も違う、これまでと違う事業に進出することとなるので、成功すれば既存事業に並ぶ柱にすることができますが、失敗する可能性も高い戦略です。

みやげ品メーカーが取るべき戦略

それでは、このマトリクスに基づいて、コロナ禍で経営が悪化するみやげ品メーカーが取るべき戦略について検討します。

まず検討すべきは、今後のみやげ品の市場環境についてです。仮に新型コロナウイルス感染症が収まった場合、2021年には東京オリンピックや東北デスティネーションキャンペーンなども予定されており、観光客が戻り既存市場が回復する可能性があります。
その場合は、既存市場にアプローチしていく「市場浸透戦略」や「新商品開発戦略」が有効となります。

ただ、現時点では感染症収束の目途が立っていないため、市場環境が回復しない、という前提で検討を行う方が現実的と言えるでしょう。その場合は、新規市場にアプローチしていく「新市場開拓戦略」や「多角化戦略」が有効となります。

この二つのうち、取り組みやすいのは「新市場開拓戦略」です。一方、「多角化戦略」は販路開拓や商品開発のコストがかさみリスクが高くなりがちです。資金面で余力がある場合に選択ができる戦略といえます。

アンゾフの成長マトリクスでみるみやげ品メーカーが取るべき戦略

新市場開拓戦略の成功例

コロナ禍で旅行が控えられみやげ品の需要が縮小している一方、外出を控えるようになったことでいわゆる「巣ごもり需要」が高まっています。みやげ品メーカーがこの「巣ごもり需要」をターゲットとした場合、みやげ品を「お取り寄せ」として販売していくというのも有効な手段です。

当事業団で支援を行った事例で、百貨店が運営するお取り寄せ商品を集めたECサイトに販路開拓を行い成約した、というものがあります。
以前はインバウンドによる「爆買い」による好影響もありましたが、コロナ禍で業績を落としている百貨店も少なくありません。そのような状況の中、ある関西圏の百貨店ではECサイトによるお取り寄せの強化を掲げて、全国の銘菓やおつまみを探していました。そこで、当事業団にてこれまで支援を行ってきた「新東北みやげコンテスト」受賞商品を紹介したところ、成約に至りました。

みやげ品メーカーが市場開拓するまで

百貨店を経由したお取り寄せ商品だと、送料の問題もあり、ある程度単価が高い商品がバイヤーに好まれます。みやげ品はそういったニーズを満たすため、商品をあまり変えずにお取り寄せ市場にシフトすることができます。

こういった背景から、当事業団で行っている「新東北みやげコンテスト」でも今回から新しく「お取り寄せ特別賞」という賞を新設しました。このような賞を取ることにより認知度を高めて、消費者やバイヤーにアピールする、というのも有効だと考えられます。機会があればぜひ次回お申込み下さい。

まとめ

みやげ品市場が厳しい状況の中、当事業団にも販路開拓のご相談が多く寄せられております。新しい市場にアプローチするためには、事前のリサーチやターゲットの再考、価格やプロモーションなどのマーケティング戦略を改めて検討する必要があります。

「どの販路を狙うべきか迷っている」、「首都圏への販路開拓を行いたいが、何から始めたらいいかわからない」という方は、マーケティングや販路開拓の専門家がいる仙台市中小企業応援窓口にて、お気軽にご相談ください。

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中小企業診断士

玉置 光好

運営を担う「新東北みやげコンテスト」を通じて、販路開拓を応援!マーケティング戦略の検討から商談の実践まで、相談者に寄り添ったアドバイスを心がけています。