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働き方改革を実現! テレワーク導入時に、事業主がすべきこと|コラム #6

  • 人事労務・採用育成

2020.09.30

こんにちは、社会保険労務士の梅原です。

新型コロナウイルス感染拡大防止を契機に、多くの企業が新たな働き方のスタイルとして急速にテレワークの導入を進めています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症対策の緊急措置としてスタートし、準備不足のまま急遽実施した企業も少なくなかったでしょう。

今回のコラムでは人事・労務管理の観点から、企業がテレワークを実施する際にやらなければならないこと。さらに、一歩踏み込んだアクションをすることで、事業主も従業員もwin-winな関係を構築する方法についてお伝えします。

なかなか進まない中小企業の働き方改革

2020年1月16日、帝国データバンクが発表した「働き方改革に対する企業の意識調査(2019年12月)」によると、働き方改革について、中小企業と大企業の取り組み状況には大きな差があることがわかりました。大企業ほど取り組みが進んでいるのに対し、中小企業と小規模企業では平均を下回っています。同データによると、中小企業および小規模企業の働き方改革が進まない理由のひとつが「資金」の問題です。そこに、今回は新型コロナウイルス感染症が拍車をかけてしまっています。

働き方改革に取り組んでいる企業の割合(規模別)

コロナ禍の今、注目される助成金

厚生労働省は、働き方改革に取り組む企業の負担を軽減し、労働環境の整備を推進するために各種助成金を設けています。このコロナ禍をきっかけに注目されはじめた助成金があります。令和2年度4月1日から運用された「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」です。この助成金は、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に実際に取り組む中小企業事業主の方に対し、要した経費の一部を助成するものです。

例えば、テレワーク用の通信機器 (原則:パソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません)の導入や、それに伴う就業規則・労使協定等の作成・変更などが対象となります。「成果目標」と呼ばれる労働時間の縮減や年次有給休暇の促進などの必要項目から1つ以上を選択、この「成果目標」の達成状況に応じ、取組みに要した経費の一部が助成される制度です。達成状況によっては、最大で100万円が助成されるケースもあります。

テレワークを導入したら、就業規則の変更と届出を忘れずに

テレワークを導入した場合、就業規則の変更と同時に、労働基準監督署に「就業規則(変更)届」の提出が必要になるケースがあります。例えば、通常のオフィス勤務であれば、水道光熱費や通信回線の費用などは一定額を会社で負担していることが多いですが、テレワークをする従業員個人の負担にする場合には、その旨を就業規則に定めなければなりません。通勤手当についても、テレワーク従業員の出社の頻度にもとづいて、定期もしくは実費のどちらで支払うかを明確に定めておくことが必要です。

このように明確なルールを最初に取り決めておけば、従業員の不安も少なく、後々のトラブルを防ぐことにもつながります。変更の方法やその手続きについて、社会保険労務士へ相談した場合に発生した費用も、上述の「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」の助成金の対象となります。

ここに注意!運動不足になりがちなテレワーク社員

筑波大学大学院人間総合科学研究科とタニタが共同で、東京都内にオフィスがある大手企業の社員およそ100人(平均年齢48歳)を対象に行った調査では、新型コロナウイルスの影響が現れる前は1日の歩数が平均約1万1,500歩だったものが、テレワークに切り替えた社員は、その歩数が29%減ったそうです。中には1日の歩数が70%ほど減って1日3000歩ほどしか歩かず、厚生労働省が病気の予防として推奨している1日8000歩を大幅に下回るケースがあるということです。

調査にあたった筑波大学大学院の久野譜也教授は「新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、あらゆる世代で運動不足になり糖尿病や高血圧といった基礎疾患の悪化などにつながるおそれがある」と話しています。(出典:筑波大学大学院人間総合科学研究科久野研究室)

テレワークを導入する前後の平均歩数

テレワークを取り入れると、通勤時間の削減や、家庭で過ごす時間の確保ができるなど、従業員が享受できるメリットはたくさんある一方で、運動不足になりがちな現状が浮かび上がっています。対面でのコミュニケーションの機会が減る中で、事業主が心がけたいこととして、労働時間の適正な管理はもちろん、いかに、従業員に健康的な働き方をしてもらうかです。顔が見えない分、オフィス勤務時よりも、従業員の健康づくりへの配慮が必要となるでしょう。

例えば、時間単位の年次有給休暇制度を導入して、業務の合間にジムに行ったり、ランニングやウォーキングといった運動を推奨するなど、健康的かつ裁量的な働き方を推進していく。このようなシーンにも、「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」が使えそうですね。

おわりに

「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」を利用する場合、2020年11月30日までに規定の交付申請書を最寄りの労働局に提出する必要があります。交付決定後、提出した計画に沿って2021年1月29日までに取組を実施し、2月12日までに労働局に支給申請する流れとなります。やはり、普段からの「時間外労働時間管理」、「年次有給休暇取得管理」が大切になってきます。

っかく始めたテレワーク、もしくは今からはじめようと思っている事業主も、しっかりと就業規則を整備し助成金を活用した経営をすることで一歩踏み込んだアクションとなり、事業主も従業員も幸せになる働き方改革が一気に進むかもしれません。

働き方改革を推進し企業を支援するための助成金は、各省庁から幅広く支援されています。中小企業応援窓口では、助成金の申請サポートはもちろん、コロナ禍にあっても助成金を活かして、社内に新たな風を取り入れる事業主の皆さまを応援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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特定社会保険労務士・国家資格キャリアコンサルタント

梅原 美鈴

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