開業者インタビュー

スピンセンシングファクトリー株式会社

その他

東北大発の超高感度磁気センサで未来を創る

御社が扱う“TMRセンサ”とは何ですか?

TMRセンサは磁気センサの一種です。身近な所では、パソコンのハードディスクに高密度で記録されたデータの読み取りにも使われています。東北大学の安藤康夫教授、中里信和教授が更なる研究の末、TMRセンサとしては世界で初めて心臓・脳が発する極めて微弱な磁場信号検出に成功しました。現在当社はこの研究成果を元に機器メーカーと協同し新たな検査機器の製品化を急ピッチで進めています。

起業のきっかけは何ですか?

弊社は前出の安藤教授、中里教授、TMR素子の作製に世界で初めて成功した宮﨑照宣名誉教授とともに設立しました。TMRセンサの超高感度化により、医療をはじめさまざまな分野で社会実装可能な段階に入りました。私達はこのTMRセンサが社会生活を充実させ、ものづくり業界に大きな可能性をもたらすことになると期待しています。また、併せて研究・会社運営のスタッフ体制が整ったことが起業のきっかけとなりました。

既存の医療用センサに対する優位性は何ですか?

既に医療現場で使用されている磁気センサを使った医療機器といえば、体の断層画像を撮影するMRIをご存知の方は多いと思います。MRIのような医療用の高感度磁気計測機の1種にSQUID(スクイッド)というものがあるのですが、これに代わる機器を当社のTMRセンサを使って開発したいと考えています。SQUIDはそれ自体が非常に高価な上、環境磁気ノイズを遮断するための巨大で高価な設備も必要です。また、超低温環境を作り出すために液体ヘリウムを必要とするので維持コストも高額です。よって資金的に余裕のある大病院でないとSQUIDは導入できません。当社のTMRセンサは室温で稼動するため液体ヘリウムは不要、高価な設備も不要のため、低コストで導入しやすい製品に出来ると考えています。小規模の病院でも精度の高い診断を行えるようになれば、多くの方が健康に長生きできる社会の実現にも繋がると思います。
もちろん価格が安いだけではありません。超高感度でありながら、大きな磁気から微弱な磁気変動まで検出可能であるため心臓・呼吸などを1つのセンサで同時に検出できます。また、患者さんが動いている状態でも診断できるなどの強みもあります。SQUIDはじっとしている必要があるので、幼児などの診断は難しいのです。

アシ☆スタのサポートはいかがでしたか?

特定創業支援等事業」の制度を利用し、経営や財務などに関するレクチャーを受けました。開業のプロセスを明確に教えていただけたことで準備をスムーズに進められただけでなく、会社設立時の登録免許税が減免される優遇措置を受けられたことは大きな助力になりました。開業までの準備期間が限られている中で、悩みや希望に応じて柔軟な支援をしていただいたと思います。開業後も経理や労務管理を効率的に行うための各種クラウドサービスを紹介頂き、その中のいくつかは実際に導入する予定です。このようなサポートにより、本業に集中しやすくなりました。販促についてもアドバイスを受け、これからの多様なビジネスパートナーに向けた事業内容のわかりやすいHP・会社案内の作成につなげることができました。

今後の展望を教えてください。

量産性が高く消費電力が少ないTMRセンサは、医療分野のみならず、幅広い分野においてIoT時代を支える安価で高性能なセンサとして成長する可能性を秘めています。多分野への応用展開を進め、広く社会に貢献していくことを目指しています。
また、当社は東北大学発ベンチャー企業である事に加えて、東北大学べンチャーパートナーズ株式会社様からも支援・出資を受けております。これにより活動の幅を大きくする事ができ、更なる飛躍に向けた大きな原動力となっています。今後、地元の企業と協働しながら研究開発や製造を行い、仙台・宮城という地でものづくりと産業を活性化させていきたいです。

起業家からのメッセージ

自身の学びと努力、モチベーションの維持だけでなく、周囲の方々とのつながりが事業の発展には欠かせません。TMRセンサもまずは来て、見て、どんなものかを知ってもらうことが一番。ご興味があれば、ぜひお気軽にお声がけください。

取材日:2019年2月14日

開業者情報

企業名
スピンセンシングファクトリー株式会社
代表取締役
熊谷 静似
開業
2018年9月
HP
https://www.spintronics.co.jp
所在地

仙台市青葉区荒巻字青葉468-1

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