開業者インタビュー
合同会社鈴の八
医療・福祉
めだか専門店✖️就労継続支援B型で、オンリーワンの事業を

JR岩沼駅のすぐそばにある「すずの舎」は、東北では珍しいめだかの専門店。さらに、就労継続支援B型事業所という側面もある、とてもユニークな事業展開をしています。この「すずの舎」を立ち上げたのは、鈴木朋文さん、工藤大樹さん、菊地光さんの3人。管理者で生活支援員である鈴木さんが「めだかが好き!」という理由で、めだか専門店を開いたのでした。
めだか専門店を始める前は、花火師だったという鈴木さん。「花火師の前は看護師だったんですけど、花火が好きすぎて、『花火師になろう』って修行して。12年くらいやって、会社としては大曲(※)で優勝したんです。すごくおもしろい仕事で好きだったけど、コロナで花火大会がなくなっちゃって。会社も苦しいっていうんで、辞めたんです」と話してくれました。
※秋田県大仙市で毎年8月最終土曜日に開催される「全国花火競技大会」。日本三大花火大会の一つとして知られている

花火師としての仕事を辞めた後、看護師として再び働き始めた鈴木さん。しかし、花火師をしていたときのように仕事に対する情熱を持つことが難しくなってしまいました。
「自分が夢中になれるものってなんだろうって考えたときに、従妹からもらって育てていためだかがあるじゃん!って。で、めだか屋さんをやりたいと思ったの。最初はビニールハウスでやろうかと思ったんだけど、そうすると“養殖”になっちゃうから農業用地が使えないって言われたんだよね。1回は断念したんだけど、どうしても諦めきれなくて。それで、店舗でめだかを育てるっていう形になったんです。それにめだか屋さんだけじゃ、なかなか難しいだろうということで、就労支援B型事業所の事業と二本柱で開業することにしたんです」

写真:就労支援利用者さんが制作しているグッズ。めだかが卵を産みつける卵床になります
開業にあたっては、アシ☆スタを利用しました。
「インターネットで調べて見つけて、なんだかよくわからないけど、相談に行って。アシ☆スタ主催のセミナーも受けましたよ。最終的に経営のことは自分で考えなきゃいけないんだけど、アシ☆スタの何がよかったかって、背中をグッと押してくれたこと。初めての起業って、やっぱり不安じゃないですか。それを専門家の先生が『行けるよ!』って言ってくれたのが心強かった。2024年の11月に初めて行って、5月にはオープン。こんなスピード感もってできたのは、アシ☆スタのおかげです」

写真:左から工藤さん、鈴木さん、菊地さん
看護師としての経験を就労支援の事業に、花火師としてのデザインセンスを店舗デザインなどに活かし「すずの舎」はスタート。
創設メンバーで職業指導員の工藤さん、生活支援員の菊地さんは看護師をしていたときの同僚です。医療関係者がそろっていることで、就労支援に通う利用者さんの健康面のケアやちょっとした体調の変化にも気づくことができます。
「うちはめだかのお世話や接客だけじゃなくて、それぞれが得意なことをやってもらうことにしてるんです。絵が得意な人には家でスケッチを描いてもらったり、習字が得意な人は習字をやってもらったり。いろいろな人が来るので、個人に合わせたことをやってもらうのがいいと思っているんですよ」

ランチも無料で提供し、得意なことを活かしながら自由に過ごせる「すずの舎」は、利用者獲得に苦労することが多いという就労支援B型事業所でありながら、開業2カ月で10人以上の方が利用中。めだかの販売も「県外からお客さんがくるほど」というくらい、順調に推移しています。

今後の目標については「ちゃんと養殖できるビニールハウスを借りて、めだかを育てて。冬はめだかの動きが鈍くなるから、利用者さんの働く場所の確保として山菜を水耕栽培したり、多店舗展開してみたり、めだかカフェなんかやったりしてもおもしろいよね」と話してくれました。

最後に、今後起業を目指す方へのメッセージを伺いました。
「まだまだ自分が言うのはおこがましいけど、夢はなんとかしようと思えば、なんとかなるよ。どうせ人生一回しかないから。失敗でも成功でも、好きなことができたならいいじゃない。別に創業だけじゃなくて、人生全般そうだと思う。もちろん、同じことをずっと続ける人っていうのも、すごいと思うけど」
「すずの舎」の物語は、まだ始まったばかり。これからどんな成長を見せてくれるのか、楽しみです。
取材:2025年7月

開業者情報
- 企業名
- 合同会社鈴の八
- 代表
- 鈴木 朋文
- HP
- https://www.suzunoya-tuki.com/about/
- TEL
- 0223-29-4719
- 所在地
〒989-2441 宮城県岩沼市館下1丁目3-11