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中華圏とコメが熱い!コロナ禍に負けない日本の食品輸出|コラム#18

  • 販路開拓・販売促進

2021.01.13

こんにちは。マーケッターの川田尚人です。

コロナ禍の影響で人の往来が大幅に制限される一方で、食卓に並ぶ食品は今も世界中を巡り、わたしたちの家庭まで送り届けられています。今回は、コロナ禍にあっても日本の食品輸出が動き続ける現状を、いち早く経済活動が復活した「台湾」、アジアの貿易センター「香港」、そして日本人となじみの深い「コメ」の3つの観点からお伝えします。

「日本ロス」に湧く台湾の商業イベント

海を隔て日本と隣接している台湾からは、例年500万人ほどが訪日し、観光地やグルメを満喫しています。1年に複数回日本へ旅行することも珍しくありません。そのような親日層がコロナ禍で台湾国内に留まらざるを得なくなった結果、日本の商品を探し求め購買する現象、いわゆる「日本ロス」がみられるようになりました。

定期的に日本の商品展を開催している商業施設やイベントでは、日本ロスによる爆発的な集客と例年以上の売れ行きに、うれしい悲鳴をあげているところも少なくありません。

この機会に、台湾へ進出する日系チェーン店や商業施設もみられます。台湾国内では、マスクの着用や公共機関での消毒の徹底を除けば、コロナ禍前と変わらない風景が広がっています。

台北市内百貨店日本イベントの様子

出典:Eye On Taiwan Media<

上の画像は、台北市内の百貨店での日本物産イベントの様子です。会期開始4日目で6万人もの来場者がありました。また、9千セット用意していたお菓子の在庫があっという間に底をつき、急きょ空輸で日本から運び出したハプニングもあったといいます。

コロナ禍でも強い存在感を放つ食品物流の要、香港

香港は人口約750万人と愛知県と同程度の規模でありながら、アジアの金融センターと貿易拠点を同時に担う特異性を持った地域です。富裕層が多く、古くから日系金融機関や商社・貿易会社が展開してきました。現在でも中国やその他各国の玄関口として、世界中の食品が輸入され、流通しています。

また香港は土地の特性により食料自給率が低く、食料品全般を中国本土産と海外からの輸入に頼っています。安い価格を武器に市場シェアを確保する中国産に対抗する形で、日本産や欧米産はブランドイメージと味での差別化を図っています。

日本からの農水品輸出総額において、香港は全体の2割を占めています。2020年3月には休業要請により店舗運営が制限されたことで、飲食店向けの需要が一時的に低迷しました。しかし金額ベースでみると、1月から10月までの統計は前年比ほぼ横ばいで、コロナ禍においても堅調に推移していることがわかります。

2020年の農林水産物・食品輸出額 国・地域別 農林水産省食料産業局

引用:農林水産省食料産業局

コロナ禍でも変わらず動き続ける「コメ」

コロナ禍の影響にも負けず、前述の地域やアジア全域で輸出量を増やしている品目があります。日本人からすればなじみのパックご飯や米菓、それらをはじめとした「コメ」にかかわる商品は、2020年に入ってからも好調を維持しています。

パックご飯の輸出量は数量ベースでみると、香港(前年同期比+83%)、台湾(+75%)、タイ(+46%)、シンガポール(+163%)、と前年をはるかに上回るペースで輸出が推移しています。
全世界向けの輸出総量ベースでも、前値同期比12%プラス(米全体では+15%)です。

パックご飯の輸出推移(日本農業新聞)

引用:日本農業新聞

包装米飯(パックご飯)等の輸出数量および金額の推移

農林水産省「コメ・コメ加工品の輸出実績について」を一部抜粋改変<

米菓の輸出はマレーシア(前年同期比+44%)、タイ(+25%)、ベトナム(+25%)と好調です。これら以外のアジア各国でも、シンガポールや台湾・中国では、前年同期比で二桁のプラス成長となっています。
例年と比較しても、堅調な推移(全世界向けでは±0)です。

米菓の輸出数量および金額の推移

農林水産省「コメ・コメ加工品の輸出実績について」を一部抜粋改変

こうした現象の背景として考えられるのが、「外出制限」「食習慣」です。

「外出制限」とついで買い

コロナ禍に伴う外出の制限で、世界各国の人びとが日常生活の大半を自宅で過ごすようになりました。日本と比較すると、アジア各国の外出制限には厳しいものが多く、容易に外に出られません。

現地には、これまで食生活の大半を外食に依存してきた家庭も多くあります。そこで、調理時間が短く保存がきくパックご飯が重宝されました。日本の商品に対する信頼感や味覚のレベルの高さが、外出制限中の自炊で選ばれるポイントになったのではないかと推測します。
私が過去に海外で生活をしていたときにも、自炊をしている駐在員男性の間では、パックご飯のお土産や差し入れが大いに喜ばれたものです。

日本でもテレワークが推奨・実施され、菓子類やデザートを「ついで買い」された方も多いかと思います。
現地の厳しい外出制限下、食料買い出しのついで買いに選ばれたのが、スナック菓子と位置付けられている米菓でした。自家消費用として購入されたものと分析されます。

さらに、パックご飯や米菓については日本の多種多様なメーカーが、世界各国で販売展開をしています。日本貿易振興機構(JETRO)の資料を参考に、市場価格などの情報から販売状況を読み取ることもできます。品目別現地市場価格調査|包装米飯(JETRO)品目別現地市場価格調査|米菓(JETRO)

「食習慣」の類似・近似性

これまで例に挙げた国々で、コメに関連した商品が受け入れられやすい背景については、アジアの米食文化が大きく関連していると考えられます。

広義に中華圏と呼ばれ、華僑が生活する国々やタイ・ベトナムでは、ご飯ものやコメを原料とした麺類が主食です。米類の加工食品についても、ローカルなものから輸入品まで幅広く流通しています。これらの事情から、コメへの認知度が現地で醸成されているだけでなく、普段の生活にも深くかかわっていることがわかります。

海外へ食品を持ち込んでいく際には、漠然としたものでも構いませんが、「現地にその食品のイメージが存在する」かどうかが、その後の展開をも大きく左右する要因となるのです。

まとめ

日本国内の市場が縮小均衡していく一方で、台湾・香港や東南アジア諸国といった中華圏への投資は、対照的に年々拡大をしています。その傾向はコロナ禍にあっても大きく変わることはありませんでした。2020年においても多くの企業や食品が、新たに進出・輸出され、海外へ羽ばたいていったことがわかりました。

仙台市中小企業応援窓口では、「海外にチャレンジしてみたい」、「市場がどんなものか知りたい」、「一度現地を見てみたい」などの、海外への販路拡大にまつわる疑問やご要望にもお応えしております。ぜひお気軽にご相談ください。

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川田 尚人

マーケッター

川田 尚人

海外との商品マッチング、人材交流を応援!仙台企業のグローバル化を促進しています。中国語が飛び交うエネルギッシュな商談が名物。