働くひとを知りたい

「家具作りのオールラウンダーになる」

奥羽木工所 柴又 彪我さん

一つひとつがオーダーメイド

仙台新港のほど近くに広大な工場を持つ、株式会社奥羽木工所。
ここは、住宅をはじめ病院や医療施設、学校や保育機関といった数多くの施設に向けた家具を制作する会社です。

傷や熱、水の浸水にも強く、耐久性にも優れた「ユニボード」と呼ばれる木製の板材を使った家具は、一つひとつがオーダーメイド。設計から板材の切断、加工、組み立て、仕上げ、出荷まで、そのすべてを自社で行っているのも大きな特徴です。
その空間にぴったりと納まる職人技も活かされた家具の数々は、これまで北海道から九州まで全国各地のさまざまな施設で利用されてきました。

もしかすると、あなたの毎日の中でも気付かないうちに奥羽木工所が手がけた家具に触れている、なんてことがあるかもしれません。

東西に300mもの幅がある工場。その広さは、家具製造工場において日本でも5本の指に入るほどの規模だという。

小さい頃からものづくりが好きだった

そんな、使う人のためを想う家具を作る会社で働くのが柴又彪我(しばまた ひょうが)さん。
入社して3年目の21歳です。

自身を「人見知り」だと話すものの、明るく穏やかな人柄が笑顔からうかがえる柴又さん。会社では“いじられキャラ”なのだとか

高校卒業後、とある縁をきっかけにこの会社の門を叩き家具作りの道へ進んだ柴又さんは、小さい頃からものづくりが好きな少年だったといいます。

「親が花壇を作ろうと思って買ってきた角材の端材を使ったりして遊んでいましたね。そんなに立派なものではないですけど、家にある適当なものを材料にしてはいろいろと作ったりしていました」

工場では柴又さんのような若手社員を中心に、元大工の経験を活かした職人なども働く

女性社員が多く活躍しているのも特徴的だ

重要な役割を担う「家具組立班」での日々

入社後は家具の制作に欠かせないいくつかの部署を経験したのち、現在は「家具組立班」に所属。
部材の切断や加工を経てコンベアで運ばれてくる部材を組み立てるその班は、家具の出来栄えを左右する重要な役割を担っているそうです。

「家具組立班のひとつ前の工程では、部材同士をつなげる“木(もく)ダボ”を取り付けるダボ打ち班の出番。そして私たちがダボを打ち込まれた部材のパーツを組み立てていくんです。木枠のついた板を部材に掘られた溝に沿って入れビスで固定していったりするのですがここで失敗してしまうと1から作り直しになってしまうんです。」
 
木ダボが打ち付けられ、組み立てられるのを待っている状態の部材。木製の板を木ダボで繋ぐことにより、家具の強度がさらに増すのだという

家具に使用する板は、どれも同じように見えてそれぞれにコンマ数ミリのズレが生じているのだとか。

「この板は寸法よりちょっと大きいな」

そう気付いたときにその調整をするのも、柴又さんが属する「家具組立班」の仕事。組立をしながら、同時に家具全体を美しくきれいに整えていく。
改めて、細部にまで気遣いと目配りが必要な仕事であることがうかがえます。

家具を一つひとつ丁寧に組み立てていく。根気と集中力を要する仕事だ

小さな棚や高さ2mほどの下足入れなど、オーダーメイドで作られる家具の種類は多岐に渡ります。
その中で一つひとつの家具とじっくり向き合い、多くの人が長年使い続けることができる製品を生み出していく柴又さんは、この仕事の魅力をこんな風に語ります。

「私は人と接するのがあまり得意な方ではないんです。だからこそ、家具を黙々と組み立てて目の前の作業に没頭できるこの仕事が好きなんですよね。」
「もし自分が営業職のような仕事だったら、仕事は続いていなかったかもしれません(笑)」

たしかに、柴又さんが一人黙々と家具を組み立てる時の集中した表情はとても印象的。
目の前にある家具のパーツを組み立て、手早く、そして丁寧な作業で家具を形にしていきます。

一点を見つめ、真剣な表情でビスを打ち込んでいく。打ち込んだら表側に回り込み、ビスが飛び出していないかの確認も怠らない

取材した日に柴又さんが行っていたのは、棚の背面に取り付けた板にビスを打ち込んでいく作業。製品の見栄えにも関わる、緊張感を伴った作業が続きます。
真っ直ぐに打ち込むことさえ難しいビス打ちを、角度を付けて打ち込んでいく…。柴又さんが持っている技術の高さを目の当たりにした瞬間でした。

「先輩から教わったのは、“ビスを打つときは、まっすぐよりほんの少し斜めにするといいよ”ということ。」
「でも今は、だんだん自分の中で“これくらいかな”ってわかるようになってきたんです。ちょっとでも製品に隙間が空いていたらダメですからね。次の工程で、“これ、やり直しだから”って戻されちゃうんです(笑)」

定められた位置にしっかりと確実にビスを打ち込んでいく。その手際の良さに、思わず見入ってしまう

たくさんの失敗も成長の糧のひとつ

こんなふうに毎日真剣に家具作りに取り組む柴又さん。

一般的に“一人前”と言われがちな入社3年目を迎え、仕事のおもしろさや大変さ、そして楽しさも感じつつあると語るのは、きっと、たくさんの失敗を重ねてきたこともその理由のひとつにあるはずです。

これまでの成長の糧のひとつとして、苦い思い出も振り返ってもらいました。

「今は入社して3年目ですが、現在所属している家具組立班はまだ1年目なんです。人手が足りないということで応援に行って、そのまま異動することになったのです。ちょうどその異動したばかりのことだったかな? 組み立てが終わってコンベアから下ろした時に、家具のバランスが悪かったんでしょうね。家具が、ドッと倒れてしまったんです。ほかにもビスが板から外れてしまったり、取り付ける部材の向きが逆だったりしたことも…。なぜか僕の場合、ミスが立て続けに起きちゃうんですよ。でもわからないことがあったときは、先輩にもう一度やり方を聞くようにしています。1回聞いたからってわかったことにはしない。確認の意味でも、何度も聞くようにしているんです。」

「ミスをしたら、仕事中ずっと引きずってしまう」という柴又さんですが、“会社を出たらミスを忘れる”というポジティブな姿勢も取り入れ、後ろ向きになりがちな気持ちは家まで持ち越さないようにしているのだといいます。

「そんな気持ちのままだと、次の日もまたミスを起こしてしまうと思うんですよ。だからなるべく忘れるようにする。もしかしたらその考えって、あんまりよくないかもしれないですけどね(笑)」。

もちろん失敗の裏では3年分のスキルの積み重ねが柴又さんのパワーになっているのも事実。身についた技術は、さまざまな形となって残っています。

実は柴又さんの母校の小学校には、自身が制作した「流し台」があるのだとか。柴又さん自身も「ある意味自慢になりますよね。これ、私が作ったんだよって」と誇らしそうに語ります。

「一般的な家具屋で販売されている家具と違って私たちが作る製品は確実にそのスペースに収まるし、学校なら生徒さん、病院なら患者さんや職員の方など、使う相手が確実に見えてくるのがいいですよね。家具を作っているうちから、実際に使われているシーンが想像できるんです」

ふと立ち寄った家具屋で、その仕上げが気になってしまうという職業病が出ることもしばしば。

「普通の人が見たら“いい家具だな”って思うような出来のものでも、“僕だったらもっときれいに仕上げられるのに!”って思うんですよ。飲食店のテーブルとかも、ついつい気になってしまいますね」

それはきっと、仕事のスキルの高さの裏返し。『自分の仕事に、しっかりとした自信と誇りを持っているんだな』そんなことを思わされた瞬間でした。

難しい角度のビス打ちも難なくこなす柴又さん。若手ながら高いスキルを持っているのは一目瞭然だ

そして、上司から掛けられたこんな言葉が、柴又さんの背中を押し続けています。

「家具作りの中で、ビスはいつでもまっすぐ正確に打たないといけないんですけど以前、主任から“いつもビス打ちがまっすぐだよね”ってお褒めの言葉をいただいたことがあるんです。それはとてもうれしかったですね。」

「ただ、その言葉をもらった次の日に思いっきりミスしちゃったんですけどね(笑)」

プライベートの充実は日々の仕事にも活かされる

いい仕事をするためには、いい休みを取ることも大切。

働く人それぞれにそのバランスの取り方がありますが、柴又さんのオフは家でのんびり過ごすスタイル。スマートフォンで動画を見るなど、ゆっくりとした時間を楽しむことが多いようです。

仕事とプライベートの切り替えについて、何か特別なルーティンがあるのかどうかも聞いてみました。

「オンとオフの切り替えは…、うーんあまり考えたことがないかもしれません。たまに出かけるときは、買い物に行ったり車で長距離をドライブしたり。車の運転が好きなので、東京まで車で行くこともあるんです。目的は、大好きな車の展示会や、乃木坂46のライブや握手会。ちなみに、西野七瀬さんが好きです(笑)」

のんびりでマイペースな性格ながら、好きなことにはとことんアクティブ。大好きなものがあるからこそ、仕事にも熱が入るのかもしれません。

プライベートの充実が仕事にも活かされている柴又さんには、周囲からの期待も集まっています。
事実、これまでにいろんな部署を任されてきたのは“オールラウンダーになってほしい”という会社からの期待の表れ。
そして柴又さんも「今だったらほとんどの仕事をできますよ!」と頼もしい言葉を口にするほど、自分自身の中で成長した手応えを感じているようです。

「仕事も遊びも、新しいことを知るのって楽しいじゃないですか。」

「例えば釣りだったら最初は魚を釣るだけで楽しいだけなのが、だんだんもっと大きな魚を釣れるようになったりしますよね? そうやって技術を一つひとつ身につけられることって、すごくいいことだなって思うんです」

楽しみながら仕事を覚える。そして、スキルを身につけていく。
自分の気持ちを高めることでもっともっと上を目指していく方法は、どんな仕事にも大事なことなのかもしれません。

笑顔でインタビューに答えてくれた柴又さん。「乃木坂46が好き」という若者らしい一面を覗かせながら、自身ならではの仕事論を教えてくれた

早く覚えるよりも、着実に一歩一歩前に進むことが大事

そして最後に、仕事を通して“自分のなりたい”を探している人たちに向けて、柴又さんからのアドバイスも聞いてみました。

「仕事をしてまだ3年の自分に言えることはあまりないのですが…」

と謙遜を含んだ前置きがありながら、その言葉にはどんなジャンルの仕事探しにもあてはまるヒントがありました。

「どんな仕事でも、早く覚える必要はないと思っているんです。もちろん時間が掛かりすぎることはよくないことかもしれませんけど、着実にひとつずつの作業を覚えながら進んでいくことが大事だと思います。あとは、その場に慣れることかな。」

「仕事を初めたばかりの頃ってどうしても周りに迷惑をかけたくないと思いがちですけど、職場の環境に慣れることでそんなこともあまりなくなると思いますよ」

学校に備える棚の完成品が多く並んでいたこの日。これまで学校用の棚は無機質な色合いが多かったが、今では木目を活かしたものが主流になりつつあるという

多くの人に何十年も使われ続ける、奥羽木工所の家具。

高いスキルを持った人の手と確かな目を通して完成した製品の数々は、私たちの暮らしをより便利に、より生活しやすくしてくれます。
いわば、人々の生活を力強く支えてくれる、偉大な縁の下の力持ち。

柴又さんは、その大きな一翼を担っているのです。

(2018/10取材 ライター:及川恵子)

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柴又 彪我さん 株式会社 奥羽木工所

プロフィール
使う人のためを想う家具を作る会社で働く、入社3年目の21歳です。

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