開業者インタビュー

株式会社ニケ・ウィング

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ビジネスグランプリ2018 奨励賞 ~倒壊による道路交通への被害を防ぐ!安全な低位置道路照明の製品化~

御社の事業の特色、商品の強みなどについてお聞かせください。

高速道路など道路上の照明設備は高い位置から路面を照らしていますが、老朽化による腐食で倒壊し事故につながる危険性があることから、新しい照明設備に切り替える動きが進んでいます。当社が開発した低位置照明システムは地上約1.1メートルの高さから道路を照らし、転倒したとしても事故や交通の妨げにならない設計となっています。

最大の特長は、指向性と明るさの異なる6つのレンズで一定の範囲内の異なる場所を照らし、一つの灯具全体でその範囲全体を均一の明るさにするという考え方です。ある技術者の方からは「これは照明の革命だ」と称賛を頂きました。

他社の低位置照明と比べて大きく異なるのは、まぶしさを回避する構造になっていることです。低位置照明の弱点は運転手の目線に近いことで、他社製の製品が設置されている東京・八王子の道路では非常にまぶしくて目がくらむというクレームだけでなく、光が漏れてまぶしいという近隣住民からの苦情もあったそうです。当社の製品はその構造上、ドライバーにまぶしさを感じさせず、不要な場所に光が届くこともありません。

起業の経緯やこれまでの歩み、苦労したことなどについてお聞かせください。

ある年のこと、車で福島から会津にかかる峠を越えている途中、真っ白な濃霧に包まれて前も後ろも見えなくなってしまいました。進めば追突する危険、止まれば追突される危険がある中、家に残してきた娘を置いて死ぬわけにはいかないと、どうにかたどり着いた避難場所で夜を明かしました。

当時、私は不動産関連事業を手掛けていましたが、そのときの体験が頭から離れず、そうした危険を回避するために何かいいアイデアはないかと考え始めたのが、製品部門を立ち上げるきっかけとなりました。5〜6年ほど考え抜いて製品の基となる理論が出来上がり、東北大大学院工学研究科の羽根一博教授の協力を得て実用化にこぎ着けました。

苦労したのは試作品の製作にかかる費用です。試作品は量産化できませんので1台当たりの製作費が高額になります。特許を取得しても実際に製品になるのは0.1%以下ともいわれますが、それも納得でした。

低位置照明という考えができたばかりなので導入する側の性能基準がなく、単に価格だけで大手メーカーの製品が採用されるという経験もしました。採用する権限のある担当者に時間を頂くのにも苦労し、やっと取れたと思っても10分や20分。そんな短い時間では十分に説明しきれず、なかなかこの製品のよさをPRできる機会が得られず苦労しました。

今後の展望や一緒に取り組みたいビジネスパートナーは?

現在、三陸自動車道の多賀城IC、六甲北有料道路、秩父自動車道の一部に当社の製品が取り付けられていますので、これが関係者の目に留まって、あるいはその評判が耳に入って、性能の高さに気付いてもらえることを期待しています。全国各地の道路に順調に導入されるようになれば、筐体(きょうたい)とレンズの生産、組み立てを現在の長野から宮城県内に移行したいと思っています。

県内の企業さんからは、ある程度まとまった分量があればラインを用意してくださるというお話もいただいています。開発に当たっては県からも助成金を頂いたので、少しでも県内の産業の活性化につなげ、その分のお返しができればと思っています。

東北には全国に誇るべき素晴らしい自然、食、文化があります。事業をより大きくしていくことで、普段は工場で働いてもらい、休日は農作業をするなど自然を味わう豊かな生活を送れるような雇用を宮城につくりたい、そんな夢も描いています。

これから起業を目指す方へのメッセージをお願いします。

低位置照明も含めて私はさまざまな特許を取得し、その製品化に取り組んでいますが、その全てが「こうだったらいいのにな」という思いから始まっています。皆さんもそういう思いが必ずあるはずなので、その思いをずっと持ち続けてほしいと思います。

始めてみると苦労も多く、次々と難問は降り掛かりますが、一つ一つクリアしていくうちに、そういうものだと慣れてしまいました。思ったように物事なんて運ばない、年数もかかって当たり前、逆に、トントン拍子に進むものほど形にならないとも思います。

だから、「こうだったらいいのにな」を実現するまで諦めないでほしいですね。それが実現すれば誰かの役に立てる、という思いも励みになるはずです。

開業者情報

社名
株式会社ニケ・ウィング
代表取締役
小栁 百合子
開業
2011年6月
HP
電話
022-218-0255
所在地

仙台市泉区明石南2丁目27-5

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